国家公務員は本当に激務?省庁のランキングや事例について解説

国家公務員-激務

霞ヶ関で働く国家公務員は激務のイメージを持たれがちですが、実態はあまり知られていません。

「どれくらい忙しいのか」「なぜ激務になりやすいのか」「省庁の激務ランキングを知りたい」など、就職の検討にあたって疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。

国家総合職・一般職ともに、ブラックな働き方を強いられている職員がいまだに多くいるのは事実です。

一方、働き方や待遇面に関して改善の動きがある点も、しっかりと押さえる必要があります。

本記事では、元国家公務員が各省庁のデータや事例を用い、国家公務員の激務の実態や理由、待遇改善、働き方改革に至るまで経験を交えて解説します。

漠然としたイメージにとらわれず、客観的な情報をもとに就職を判断できるよう、ぜひ最後までご覧ください。


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目次

国家公務員の激務の実態

国家公務員の激務の実態

霞ヶ関の国家公務員の激務については、イメージではなくデータで実態を捉えることが大切です。

データをみると国家公務員の残業時間は多く、かつ残業の上限を超えた働き方をする職員が相当な割合いることが分かります。

それぞれのデータを詳しく解説します。

職員の残業時間は月平均33.1時間である

各省庁で働く国家公務員の残業時間は月平均で33.1時間、年間に直すと397時間です。

直近の推移をまとめると以下の表のとおりで、月の残業時間の平均は30時間前後で高止まりしています

時期年間残業時間月平均の残業時間
令和5年397時間33.1時間
令和4年383時間31.9時間
令和3年358時間29.8時間
令和2年356時間29.7時間
※出典:人事院「令和5年国家公務員給与等実態調査の結果」

なお、厚生労働省の調査によると、パートを除く民間労働者の月平均の残業時間は13.8時間です。

業界が異なるため厳密な比較ではないものの、国家公務員の残業時間は民間と比べて多い傾向にあるといえます。

【出典】厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年分結果確報」

激務部署で残業の上限を超えて働く職員が多くいる

霞ヶ関には激務部署で残業の上限を超えて働く国家公務員が、いまだに多く存在します。

職員の残業時間に関するデータ
  • 全職員(約4.8万人)のうち他律部署で働く職員は77.7%(約3.8万人)
  • 他律部署の中で残業の上限を超えて働く職員は28.5% (約1.2万人)

他律部署とは突発的な案件が多く、自ら業務の量や時期を決められない激務部署のことです。

他律部署は通常の部署より残業の上限がゆるく、かつ忙しいときは上限を超えた働き方が認められています。

通常の部署の残業上限例外(他律部署)の残業上限
・月45時間以下
・年360時間以下
・月100時間未満
・年720時間以下
・2~6ヶ月平均80時間以下
・月45時間超は年6ヶ月まで

残業の上限が高めに設定されている激務部署で働く職員が約8割、その中で上限を超えて働く職員が約3割いるのが実態です。

【参考】人事院「上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合等について(令和4年度)」

省庁の激務ランキング|ブラックな省庁の見分け方

激務の省庁ランキング

省庁ごとの国家公務員の激務度合いやその見分け方について、以下の3つに分けて説明します。

  • 主な省庁の残業に関する情報の総まとめ
  • ランキングは目安として捉える視点が大切
  • 仕事の中身を深掘りするのがポイント

国家総合職・一般職への就職にあたり、ブラックな省庁・ホワイトな省庁が気になる方は、ぜひチェックしてみてください。

主な省庁の残業に関する情報まとめ

各省庁において残業の上限を超えて働く職員や他律部署の割合は、以下のとおりです。

省庁名他律部署で上限越えの職員の割合他律部署の割合
内閣府32.2%80.3%
警察庁18.2%88.3%
金融庁27.7%95.2%
デジタル庁42.3%100.0%
総務省32.9%65.2%
法務省24.7%88.5%
外務省37.7%97.6%
財務省41.4%97.6%
文部科学省23.8%98.4%
厚生労働省37.1%96.6%
農林水産省26.0%52.7%
経済産業省33.1%78.9%
国土交通省22.7%90.1%
環境省35.7%95.5%
防衛省17.4%100.0%
出典:人事院「上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合等について(令和4年度)」
※上記以外の省庁はリンク先で確認可能。

データをみると、他律部署で残業の上限を越えて働く職員の割合はデジタル庁の42.3%が最高で、財務省が41.4%と続きます。また、他律部署の割合はデジタル庁と防衛省の100%がもっとも高い結果です。

そのほか、外務省や厚生労働省においても、激務の職員や他律部署の割合が高く出ています。

また、民間会社が自社のサービス利用者を対象に、国家公務員時代の残業時間を聞き取った以下のランキングもあるので、あわせて参考にしてください。

【参考】オープンワーク株式会社「『国家公務員の残業時間ランキング』を発表しました。」

ランキングは目安として捉える視点が大切

省庁の激務ランキングや情報のまとめは有用ではありますが、あくまで目安として捉える視点が大切です。

省庁ごとの残業時間は年によって変化し、同じ省庁の中でも部署によって働き方が大きく異なるためです。

担当分野が政治的に取り上げられた省庁は残業時間が増える傾向にありますが、毎年続くわけではありません。たとえば、前項のデータで外務省の残業時間が多いのは、広島サミットの影響が考えられます。

ランキングやまとめは、国家公務員や志望省庁の実態を理解するきっかけとして活用するのがおすすめです。

仕事の中身を深掘りするのがポイント

国家公務員や志望省庁の働き方がブラックかホワイトかを見分けるためには、データや事例を通じて仕事の中身を深掘りする必要があります。

単に残業時間の数値をみるだけでなく、長時間労働になる背景や職員の生の声に着目するのがポイントです。

もし志望省庁にOBや知り合いがいる場合、公表データやホームページからは見えない実態を聞きにいくことをおすすめします。

本記事でも、激務になる理由や筆者の実体験をできる限り具体的に紹介していきます。

なぜ国家公務員は激務なのか?

なぜ国家公務員は激務か

国家公務員が激務になる主な理由は、以下の3つにまとめられます。

  • 国会対応の準備や待機の時間が多いから
  • 突発的な対応が生じやすいから
  • 事務作業が膨大でミスが許されないから

実際、上記の理由によって長時間労働が生じていることが、多くのデータによって示されています。

たとえば、残業の上限を超えて働く職員が取り組んでいた主な業務は、以下の表のとおりです。

業務の内容上限を超えた職員の割合
国会対応業務21.0%
予算・会計関係業務12.4%
重要な政策に関する法律の立案9.2%
新型コロナ感染症対策関連業務7.3%
出典:人事院「上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合等について(令和4年度)」

以下では、冒頭で挙げた国家公務員が激務になる主な理由3つをさらに深堀りしていきます。

国会対応の準備や待機の時間が多いため

国家公務員が激務になるもっとも大きな理由は、国会対応の準備や待機の時間が多いためです。

国会対応に時間がかかる主な理由として、以下が挙げられます。

国会対応に時間がかかる理由
  • 国会議員から質問の事前通告が出される時間が遅いため
  • 事前通告の内容が明確でなく、多くの答弁を準備する必要があるため
  • 国会答弁を作成するプロセスに時間のかかる手続きが多いため

実際に国会答弁の作成が原因で、夜中まで仕事をし続けるのはいまだによく見られる光景です。

国会の山場は1~3月、10~12月であり、期間中は多くの職員が激務になりやすいといえます。

【参考】人事院「国会対応業務に係る各府省アンケートの結果について」

突発的な対応が生じやすいため

災害やコロナなど緊急事態への突発的な対応が生じやすいのも、国家公務員が激務になる理由の一つです。

緊急事態の際には緊急性が高まるほど急ぎの対応が求められるため、業務時間が増え、時間あたりの仕事の密度も濃くなります

たとえば、コロナ禍では霞ヶ関全体で業務量が膨大に増えたため、月の残業が300時間を超える職員もいて、「ブラック霞ヶ関」の見出しがニュースに出たこともありました。

突発対応はいつまでも続くものではありませんが、対応が終わるまでの間は過酷な働き方になります。

事務作業が膨大でミスが許されないため

国家公務員の事務作業は膨大でミスが許されないのも、激務になる理由の一つです。

予算や法律などは国民の生活に直結する重要な業務であるため、過去の文献を徹底的に調べながら丁寧に作業する必要があります。

また、機密性が高いものが多く、外注やAIの活用など効率化する手段が限られているのも仕事の特徴です。

予算や法律のプロジェクトは数ヶ月で落ち着くケースが多いものの、期間中には夜遅くまでの勤務が求められます。

国家公務員の激務に関する事例

国家公務員の激務の事例

国家公務員の激務の実態をより深く理解するためには、事例を知ることも大切です。

国家総合職として新卒から約7年間勤めた筆者の経験をもとに、以下の3つに分けて解説します。

  • 筆者による実際の残業時間の記録
  • 忙しさは月ごとに大きく異なる傾向がある
  • 残業時間が多くても労働の密度が薄いことがある

筆者による実際の残業時間の記録|月平均70時間

国家公務員の激務の事例として、筆者の係長時代のある年における残業時間の記録は以下のとおりです。

残業時間最大の残業要因
1月70時間国会
2月80時間国会
3月115時間国会
4月60時間政策の企画・立案
5月65時間政策の企画・立案
6月65時間政策の企画・立案
7月30時間通常業務
8月40時間予算対応
9月65時間予算対応
10月95時間国会
11月75時間国会
12月70時間国会
平均70時間

残業時間がもっとも多かったのは3月で115時間、少なかったのは7月で30時間、月平均は70時間でした。

国会対応が中心の他律部署であり、残業が比較的多いケースです。

主な残業要因は前項「なぜ国家公務員は激務なのか?」で紹介したデータと同じであり、国会や予算、政策の企画・立案が挙げられます。

忙しさは月ごとに大きく異なる

筆者の事例をみると、国家公務員の忙しさは月ごとに大きく異なる傾向が見てとれます。

10月~12月、1月~3月は国会対応で忙しく、残業時間が多いのが特徴です。その他の月も、政策や予算に関する業務があるときは忙しくなります。

一方、7月~8月は残業要因となる業務が少なく、忙しいときと比べて残業時間が大きく減る傾向です。

たしかに、国会の時期はプライベートな時間も取りづらく、激務になりやすい点は否定できません。

しかし、主に夏の時期は一年の中で業務が落ち着き、休暇をまとめて取得できるのもまた事実です。

残業時間が多くても労働の密度が薄いことがある

筆者の経験をさらに深掘りすると、残業時間が多くても労働の密度が薄いことがあるのも注目すべき点です。

国会対応は質問が判明するまでただ待機する時間も多く、見かけの残業時間より大変ではないときがあります

一方、残業時間は労働の密度にかかわらず満額もらえます。たとえば、係長級で80時間残業した月の手取りは40~50万円と、民間大手と比べて遜色ない額をもらえるのも事実です。

もちろん国家公務員の激務は見直されるべきですが、企業の長時間労働とは質がやや異なる点には注意する必要があります。

なお、本メディアでは、国家総合職・国家一般職の年収を詳しく解説した記事も掲載しています。

【関連記事】
国家総合職の年収は低い?年齢別のモデルケースや事例を元職員が解説
国家一般職の年収は低い?モデル給与や地方公務員との比較も紹介

働き方改革や待遇改善による激務の見直し

国家公務員の働き方改革

国家公務員は激務ですが、働き方改革により長時間労働が改善されつつあることも押さえるべきポイントです。

近年は人手不足の中で、各省庁は少しでも優秀な人材を活用するために工夫を重ねています

全省庁に共通する改善の取り組みは以下の3点です。

  • テレワークなど柔軟な働き方を推進している
  • 国家総合職・一般職ともに給料が増加している
  • 育児休業の取得を促進している

それぞれ詳しく説明していきます。

テレワークなど柔軟な働き方を推進している

国家公務員も民間と同様に、テレワークやフレックスタイム制などの柔軟な働き方を推進しています。

激務の理由の一つである膨大な事務作業は自宅でできるものも多く、柔軟な働き方と相性は悪くありません

たとえば、直近(令和5年度)で柔軟な働き方を推進している例は以下のとおりです。

柔軟な働き方を推進している例
  • 各省庁でテレワークの取得率が年々増加(※)し、通信速度の改善などハード整備も進められている
  • コアタイム(職場共通の勤務時間)が2~4時間に短縮され、働く時間を自由に設定できる
  • 令和7年度から平日のうち1日を勤務しない日にできる

※令和4年時点で、週に1回以上テレワークを実施する職員が40%以上
【参考】内閣人事局「令和4年度働き方改革職員アンケート結果について」

各省庁において、引き続き柔軟な働き方を進めていくとの方針が出されています。

国家総合職・国家一般職ともに給料が増加している

国家公務員の激務を支える給料も、国家総合職・国家一般職ともに毎年増加しています。

とくに、若手職員の待遇に重きを置いて給料を引き上げているのが最近のトレンドです。

たとえば、直近で初任給(残業代は含まない額)が以下の表のとおり引き上げられました。

区分引上げ前引上げ後
総合職(院卒)月26.8万(年394万)月27.8万(年411万)
総合職(大卒)月23.6万(年348万)月25.0万(年369万)
一般職(大卒)月22.9万(年338万)月24.3万(年359万)

ほかにも、成績優秀者のボーナスの引き上げやテレワーク手当の新設など、さまざまな取り組みを実施中です。

より優秀な人材を確保しようとする人事当局の方針が読み取れます。

【参考】人事院「就活中の皆さまへ」

育児休業の取得を促進している

各省庁では、育児休業を取得しやすくなる取り組みに力を入れているのもポイントです。

人事院の調査によると、現状ですでに国家公務員全体で女性の育休取得率はほぼ100%、男性も72.5%であり、数値は増加傾向にあります。

育児中は、短時間勤務や特別休暇の利用はもちろん可能です。ほかにも、職員の希望を踏まえ、育休からの復帰直後には柔軟な働き方がしやすい部署で働けるなど、さまざまな配慮が受けられます。

仕事はまだ激務な面はありますが、ライフプランに合わせた働き方が年々しやすくなっているのも事実です。

【参考】人事院「仕事と家庭の両立支援関係制度の利用状況調査(令和4年度)」

激務に関するデータや事例をもとに国家公務員への就職を判断しよう

国家公務員の激務まとめ

本記事では、国家公務員の激務の実態や省庁のランキング、実際の事例、働き方改革や待遇改善の動きについて解説してきました。

国家公務員への就職を検討する際には、イメージだけに惑わされず、データや事例を冷静にみる必要があります。

実態として国会対応や事務作業による残業が多く、まだまだ激務といえるのは事実です。

一方、テレワークなど柔軟な働き方の推進や給料の増加など、改善の動きも確かにみられます。

本記事が国家公務員への就職にあたっての判断の参考になれば幸いです。

なお、国家総合職の仕事の魅力や官庁訪問、国家一般職に興味がある方は、以下の記事も参考にしてみてください。

【関連記事】
国家総合職とは?仕事の魅力や一般職との違いについて元職員が解説
国家総合職の官庁訪問とは?落ちる理由や対策について元職員が解説
国家一般職とは?やめとけといわれる理由や働くメリットについて解説

また、実際に働く職員や経験者の話を聞くことで、働くイメージがより鮮明になります。

本記事の筆者は、国家公務員への就職に関する相談サービスを実施しています。

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この記事を書いた人

筆者は新卒から国家公務員を約7年間勤め、政策の企画立案・調整、調査研究、国会の対応など多岐にわたる業務に取り組んできました。

現在はフリーランスとしてチームを組んで受託事業を中心に取り組みつつ、自身のビジネスも幅広く展開しています。

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