国家総合職の年収は低い?年齢別のモデルケースや事例を元職員が解説

国家総合職の年収は低い?

国家総合職の年収は、国家公務員への就職や転職を考える際の重要な判断材料の一つです。

しかし、実際の年収に関する情報は出回っておらず、キャリア官僚は激務薄給といったイメージばかり広がっています。

「本当に金額は低いの?」「1年目の給料や年齢別の推移は?」「成果給の仕組みはあるのか」など、疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、元国家総合職の筆者が、国家総合職の平均年収や年齢別のモデルケース、成果との関係、事例、改善の動きについて、経験を交えて解説します。

後悔しない就職の判断ができるよう、ぜひ最後までご覧ください。


なお、国家総合職の仕事の魅力については、以下の記事でまとめています。

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目次

国家総合職の平均年収

国家総合職の平均年収

人事院の調査によると、令和5年の国家総合職を含む行政職の国家公務員の平均年収は約670万です。平均の月収は約40.4万円で、調査対象の職員数は14.0万人、平均年齢は約42歳でした。

(出典:人事院「令和5年 国家公務員給与等実態調査」)

平均年収は国家公務員の給料の実態を大まかに把握するのに役立ちます。ただし、上記の数字は総合職と一般職を足し合わせた数字です。

総合職は一般職と比較して昇給スピードが早いため、総合職だけの平均はさらに高くなります。

年収に関してよりイメージを掴むためには、本記事で紹介する年齢別のモデルケースを見るのがポイントです。

国家総合職の年収推移|年齢別のモデルケース

国家総合職の年収の推移

国家総合職の年収推移について、年齢別のモデルケースをもとに深掘りしていきます。

以下では年齢別の基本給と院卒・大卒1年目の収入に分けて詳しく説明するので、ぜひチェックしてください。

35歳で731万円!年齢別の基本給

人事院の公表情報によると、国家総合職の年齢別の基本給のモデルケースは以下のとおりです。

役職年齢月収年収
係員22歳25万円406万円
課長補佐35歳44万円731万円
課長50歳75万円1,272万円
局長108万円1,791万円
事務次官141万円2,349万円
出典:人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」

国家総合職の22歳の係員がもらう年収は406万円、35歳で課長補佐になると年収は731万円に到達します。国家公務員は年功序列であり、年齢が上がるにつれてゆるやかに昇給するのが特徴です。

また、上記の金額は毎月コンスタントにもらえる基本給であり、実際には残業代(超過勤務手当)が加算されます。

残業代の時給は年収を年間の勤務時間で割った金額であり、係員は時給1,500円~2,000円、課長補佐は時給3,000円~3,500円が目安です。

もし課長補佐が毎月30時間残業すると、残業代は月に10万円程、年間で120万円程が加算され、年収は850万円程の水準になります。

【参考】人事院「国家公務員の諸手当の概要

院卒・大卒1年目の収入

国家総合職の院卒・大卒1年目の月収(初任給)と年収は以下のとおりです。

区分1年目の収入
総合職(院卒)月27.8万(年411万)
総合職(大卒)月25.0万(年369万)
出典:人事院「就活中の皆さまへ」

院卒1年目の年収は約411万円、大卒1年目の年収は約369万円であり、金額はあらかじめ法令で決まっています。

また、上記についてもあくまで基本給であり、実際には残業代が加算される点に注意が必要です。

とくに、1年目の職員は国会の連絡係として配属することが多いため、月に80時間程の残業が続くことも少なくありません。

係員の残業代は時給1,500円程が目安のため、もし月に80時間残業した場合、基本給の年収におよそ200万円近く上乗せされます。

本当に低い?国家一般職や民間企業の年収との比較

国家総合職と一般職・民間企業の年収比較

国家総合職の年収を一般職や民間企業と比べると、以下の2つのことがいえます。

  • 国家一般職よりは明らかに高い
  • 民間企業の平均よりは高いが競合と比べると低い

年収が低いか高いかは、金額のみではなく仕事のやりがいも含めて個人の価値観から判断するものです。

とはいえ、就職の判断にあたりデータによる水準の比較も大切なポイントなので、ぜひ参考にしてください。

各データを詳しく説明していきます。

国家一般職よりは明らかに高い

国家総合職の年収と一般職の年収をモデルケースで比較すると以下のとおりです。

区分1年目35歳時点
総合職(大卒)月25.0万(年369万)月43.9万(年731万)
一般職(大卒)月19.6万(年322万)月27.9万(年464万)
出典:人事院「第3回 人事行政諮問会議事務局説明資料」。国家一般職は地方機関の場合。

総合職と一般職は1年目の段階で年収に約40万円の差があり、35歳時点で差は約250万円へと広がります

背景にあるのは昇進スピードの差であり、総合職は約4年で係長、約7年で課長補佐に到達するのに対し、一般職は約8年で係長、約17年で課長補佐になるのが一般的です。

総合職は若いうちから責任のある仕事を任されるため、その分給料の差も大きく開いていきます。

民間企業の平均よりは高いが競合と比べると低い

国家総合職の年収を民間企業と比べると、平均よりは高いものの、就職先の競合と比べると低くなります。

まず、国家公務員の年収は、企業規模50人以上の企業の年収の水準と釣り合うよう、毎年調整される仕組みです。総合職は国家公務員全体の中では年収が高いため、企業の平均水準を超えているといえます。

一方で、国家総合職に就職する学生は、より高給な企業に就職できたケースも少なくありません。人事院の調査によると、入省1年目職員の同級生の就職先は「コンサルタント・シンクタンク」「商社」が人気です。

たとえば、東大生の就職先ランキングに載る企業との大卒初任給の比較は、以下のとおりです。

就職先月収年収
国家総合職月25.0万年369万
野村総合研究所月28.7万年517万
三井物産月27.7万年499万
※野村総合研究所と三井物産の金額は公式サイトから引用。ボーナスは口コミサイトを参考に6ヶ月分と仮定して算出。

データをみると、国家総合職の年収は就職先の競合となる企業と比べると水準は低いといえます。

ただし、就職の判断にあたっては金額のみではなく、給料に成果が反映されるのか、働いていてどう感じるかなど、さまざまな観点での理解が大切です。

【参考】
人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」
人事院「総合職試験等からの新規採用職員に対するアンケート調査の結果」

国家総合職の年収と成果の関係

国家総合職の年収と成果の関係

国家総合職の年収は職員の成果や評価が反映されるものであり、ポイントは以下の2つです。

  • 人事評価に応じて昇給スピードが異なる
  • 半期ごとの成績によってボーナスの金額が異なる

前提として、国家公務員は公務という仕事の性質上、短期の成果で報酬に差をつけることはできません。そのため、給料を増やすよりも、やりがいのあるポストを与えることで優秀な職員へ配慮しています

しかし、その中でも昇給やボーナスによってできる限り待遇の差をつけているのも事実です。

各ポイントを詳しく説明していきます。

人事評価に応じて昇給スピードが異なる

国家総合職の年収は、人事評価に応じて毎年の昇給スピードが異なります。

評価に伴う昇給区分は上からA~Eまであり、評価に応じて基本給である「俸給」の上がり具合が決まるのがポイントです。

A評価は8号、B評価は6号、C評価は4号、D評価は2号、E評価は0号それぞれ上がります。各俸給は「俸給表」という一覧表で確認可能です。

たとえば、大卒1年目の評価がAかBかCかによって、2年目の基本給に以下の差が生まれます。

評価伸び昇給後
A評価月1.3万(年15,7万円)月26.3万(年385万)
B評価月1.0万(年11,9万円)月26.0万(年381万)
C評価月0.6万(年7,7万円)月25.6万(年377万)
出典:人事院「俸給表」。大卒1年目は2級1号俸から始まるため、Aは2級9号俸、Bは2級7号俸、Cは2級5号俸になる。

A評価とC評価を比べると、翌年の基本給は月収で7,000円ほど、年収だと8万円ほどの差が開くのが実態です。

なお、A評価を取れるのは職員の上位5%、B評価は上位20%なので、誰でも高い評価取れるわけではありません。

金額としてはそれほど大きくありませんが、長期的には給料の差が着実に開いていきます

【関連記事】「国家公務員の人事評価とは?昇格への影響や改善の動きを元職員が解説

半期ごとの成績によってボーナスの金額が異なる

国家総合職の年収の一部であるボーナスは、半期ごとの成績によって金額が異なります。

ボーナスは「勤勉手当」と「期末手当」を足し合わせたもので、1年に2回、合計月収の4.4月分もらえる制度です。

成績をもとに、ボーナスの半分にあたる「勤勉手当」が以下の表のとおり4段階評価で加算・減額されます。

成績加算・減額率
特に優秀119%~200%
優秀107.5%~119%
良好96%
良好でない87.5%
出典:人事院「国家公務員の諸手当の概要」

たとえば、勤勉手当の基本額が30万円だとすると、ボーナスの幅は26.3万円~60万円です。

増減の割合は企業ほど大きくはないものの、成績に応じた一定のインセンティブはあるといえます。

【経験談】国家総合職の年収の事例

国家総合職の年収の事例

国家総合職として約7年間勤めた筆者の経験談をもとに、以下の2つに分けて年収を解説します。

  • 実際の年収推移
  • 公表データからはみえない実態

公表データだけではなく、実際の年収の金額や働く実感を知ることでより多角的な理解が可能です。

国家公務員への就職を判断するにあたって、ぜひ参考にしてください。

実際の年収推移

筆者の国家総合職時代の年収推移について、以下のとおりまとめました。

年収ベース給残業代
1年目650万円350万円300万円
2年目550万円350万円200万円
3年目650万円360万円290万円
4年目750万円370万円380万円
5年目880万円380万円500万円
6年目900万円390万円510万円
※ベース給にはボーナスを含める。分かりやすさのため、金額は簡略化している。

1年目から3年目の役職は係員で年収は550万円~650万円であり、4年目~6年目の役職は係長で年収は750万円~900万です。

キャリアを通じて残業が多めの部署(月平均70~80時間ほど)だったため、年齢別のモデルケースよりは高めに出ています。

また、3年目あたりまでは残業代が満額でなかったため、金額が抑えられていました。しかし、4年目以降は残業代がすべて出たため、上乗せ分が大きくなっているのがポイントです。

若手職員の年収としては、大手の民間企業に劣らないくらいはもらえていたことが分かります。

公表データからはみえない実態

筆者の年収推移や経験を参考に、国家総合職の年収に関して公表データからは見えない実態をまとめると以下のとおりです。

公表データからは見えない実態
  • 残業代による変動が大きく、基本給を大きく超えるケースも少なくない
  • 給料や残業時間が多い月でも、労働の密度が高くないときもある

筆者の事例のとおり、年収の多くは残業代に支えられており、年や部署によって金額が大きく異なります。なお、筆者が例外ではなく総合職の若手はみな長時間労働になりやすく、同期の多くも同様の年収水準でした。

また、長時間労働は当然是正されるべきですが、国会の質問が出てくるまでただ「待機」している時間も多くあります。そのため、筆者としては労働の密度以上に高い給料をもらえていると感じることもありました

国家公務員への就職を考える際には、こうした職員のリアルな声を聞いて、自身にとって妥当かどうか判断することをおすすめします。

【関連記事】「国家公務員は本当に激務?省庁のランキングや事例について解説

国家総合職の年収を改善する動き

国家総合職の年収を改善する動き

国家総合職の年収は固定化されたものではなく、とくに近年は金額の引上げなど改善の動きが進んでいます。

具体的な改善のポイントは以下の2つです。

  • 基本給・初任給の引上げを中心とした待遇改善
  • 成果を踏まえた給与体系へのシフト

政府が優秀な国家公務員の確保に向けた取り組みに本腰を入れているのは、就職の判断にあたって押さえておくべき事実です。

各ポイントを詳しく説明していきます。

基本給・初任給の引上げを中心とした待遇改善

国家総合職の基本給、中でも初任給が大きく引き上げられたのが待遇改善の最大のトピックといえます。

令和5年の初任給の改善は33年ぶりの高水準であり、具体的な引上げ幅と現在の給料は以下のとおりです。

区分引上げ幅現在の給料
総合職(院卒)月1.0万円(年16万円)月27.8万(年411万)
総合職(大卒)月1.4万(年21万)月25.0万(年369万)

また、入省後の基本給についても、係員は勤続年数に応じて2.8%~5.2%、係長も1.0%引き上げられています。

さらに、ベースとなる給料の引上げとあわせて以下の取り組みも進められているのもポイントです。

基本給以外の待遇改善
  • ボーナスの水準を0.10月分引き上げて4.4月分から4.5月分に
  • テレワークを月に10日以上活用する職員に月額3,000円の手当を支給する

優秀な人材の獲得が厳しい中で、若手を中心に据えた待遇改善を今後も続けていくと人事院が表明しています。

【参考】人事院「就活中の皆さまへ」

成果を踏まえた給与体系へのシフト

国家総合職の年収を改善する動きとして、より成果を踏まえた給与体系へシフトしている点も重要です。

人事院は令和6年度から個人の能力や実績に応じた制度へアップデートすると表明しており、具体的には以下の検討が行われています。

成果を踏まえた給与体系の検討
  • 優秀な評価を獲得した若手~中堅の基本給の上限幅を引き上げる
  • 管理職の給料を職責や職務の内容に応じたものへと見直していく
  • 優秀な成績を収めた職員へのボーナスの加算上限について、現状の2倍よりさらに広げる

これまでのネガティブなイメージを刷新するため、給与体系の変更へと踏み込み始めているのが事実です。

【参考】人事院「就活中の皆さまへ」

国家総合職の年収への理解を深めて後悔のない選択をしよう

国家総合職の年収まとめ

本記事では、国家総合職の平均年収や年齢別のモデルケース、成果との関係、推移を含む事例、改善する動きについて解説してきました。

国家総合職の基本給は一般職や民間平均と比べると高いものの、就職先として競合する企業と比べると低いのは事実です。

一方で、実態として残業代を含めると大手企業の年収と遜色ない収入であるケースも少なくありません。また、初任給の引き上げをはじめ、若手を中心とした待遇改善の動きが進んでいるのも注目すべき点です。

本記事を参考に国家総合職の年収を幅広い視点で理解して、後悔しない選択をしましょう

なお、本記事の筆者は、より実態を深く理解したい方向けに相談サービスを実施しています。

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この記事を書いた人

筆者は新卒から国家公務員を約7年間勤め、政策の企画立案・調整、調査研究、国会の対応など多岐にわたる業務に取り組んできました。

現在はフリーランスとしてチームを組んで受託事業を中心に取り組みつつ、自身のビジネスも幅広く展開しています。

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