国家総合職試験の完全ガイド!概要や難易度、合格に必要な対策を解説

国家総合職試験の完全ガイド

国家総合職試験は、志望省庁の面接を受けるために合格が必須の試験であり、公務員試験の中でも最難関として位置づけられています。

しかし、試験の制度が複雑で分かりづらく、かつ都心部と地方の受験生には情報格差がみられるのが実態です。

「倍率や難易度はどれくらいか」、「教養区分はどんな出題がされるのか」、「勉強のコツはあるのか」など、疑問や悩みをお持ちの方も多いのではないかと思います。

国家総合職試験は難易度が高いものの、合格者の出身大学は幅広く、誰にでもチャンスがある試験です。合格のためには出題傾向をしっかりと把握しながら、効率的に勉強を進める必要があります。

そこで本記事では、国家総合職試験の概要・日程や難易度、出題傾向、合格に必要な対策について、元国家総合職の職員が経験を踏まえて解説します。

国家総合職試験を突破して志望省庁への面接にスムーズに進めるよう、ぜひ最後までご覧ください。

※本記事はあくまで個人の見解をまとめたもので、組織としての見解ではありません。

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目次

国家総合職試験の概要

国家総合職試験の概要

国家総合職試験は、政策の企画・立案や調査・研究を行う国家公務員を採用するための試験であり、筆記や面接、討議など内容はさまざまです。

毎年少しずつ試験制度が変更されており、概要は以下の4つに分けられます。

  • 試験区分
  • 受験資格
  • 全体の流れ・時間割
  • 試験会場

それぞれ重要な情報を整理したうえでポイントを説明していくので、ぜひチェックしてみてください。

試験区分

国家総合職の試験区分を整理すると以下のとおりです。

時期院卒者試験大卒程度試験
春試験(専門試験)行政、人間科学、デジタル、工学、数理科学・物理・地球科学、化学・生物・薬学、農業科学・水産、農業農村工学、森林・自然環境、法務政治・国際・人文、法律、経済、人間科学、デジタル、工学、数理科学・物理・地球科学、化学・生物・薬学、農業科学・水産、農業農村工学、森林・自然環境
秋試験(教養区分)教養
出典:人事院「総合職試験受験案内

表のとおり、国家総合職試験は院卒者試験と大卒程度試験に分かれており、実施時期によって受けられる試験区分が異なります

春に開催される専門試験の場合は、大学や大学院で学んだ専門性に合わせて受けられるのが特徴です。一方で、狭き門ではありますが、試験で専門性が問われない教養区分もあります。

なお、院卒であれば、原則として院卒者試験を受けることが人事院から推奨されています。

元職員からみえるポイントとして、院卒・大卒は官庁訪問の際は基本的に同じ採用枠を争い、入省後も同じ年次として並びで昇進していくことです。ただし、院卒の試験区分の方が初任給は数万円程度高くなります。

受験資格

2024年最新時点の情報として、国家総合職の専門試験と教養区分の受験資格は以下のとおりです。

専門試験(院卒)専門試験(大卒)教養区分
・平成6年4月2日以降生まれ
・院卒又は令和7年3月までに卒業見込み
・平成6年4年2日~平成15年4月1日生まれ
・平成15年4月2日以降生まれで、大卒又は令和7年までに卒業見込み
・平成6年4年2日~平成17年4月1日生まれ
・平成17年4月2日以降生まれで、大卒又は令和7年までに卒業見込み
出典:人事院「総合職試験受験案内」※院卒は法務区分以外。法務区分は出典元を参照。

専門試験については大学三年次、院卒者試験は院の一年または二年に受けることが想定されています。

特筆すべき点として、教養区分は年齢要件が引き下げられてきており、現在は大学2年秋の時点で受けられることです。

年齢要件の引き下げは、国家公務員の受験者数が年々下降傾向にあり、少しでも採用者の間口を広げたい意図が現れたものといえます。

全体の流れ・時間割

国家総合職試験の全体の流れ・時間割は以下のとおりです。

試験区分試験段階試験種目解答時間
専門試験(院卒)1次試験基礎能力択一2時間20分
専門択一3時間30分
2次試験専門記述3時間
政策討議1時間30分
面接
専門試験(大卒)1次試験基礎能力択一2時間20分
専門択一3時間30分
2次試験専門記述3時間
政策討議2時間
面接
教養区分1次試験総合論文4時間
基礎能力択一3時間30分
2次試験企画提案2時間30分
政策討議1時間30分
面接
出典:人事院「総合職試験受験案内 (専門)」「総合職試験受験案内 (教養)
※各試験種目の内容は後述。
※院卒は法務区分以外。法務区分は出典元を参照。

いずれも共通しているのは、1次試験が択一が中心であるのに対し、2次試験は人数が絞られて、記述力や人柄、対人能力について時間をかけてチェックされることです。

筆記・人物試験ともに試験内容をしっかり把握して、幅広く対策すべきことがわかります。

なお、試験の流れの中には含まれませんが、以下のように英語試験による加算点があることにも注意が必要です。

英語試験による加算点
  • 以下のいずれかを満たせば15点加算
    • TOEFL 65以上80未満
    • TOEIC 600以上730未満
    • IELTS 5.5以上6.5未満
  • 以下のいずれかを満たせば25点加算
    • TOEFL 80以上
    • TOEIC 730以上
    • 英検1級又は準1級

【出典】人事院「総合職試験受験案内 (専門)

試験会場

国家総合職試験の会場は以下のとおりです。

試験区分一次 二次(筆記)二次(人物)
専門(院卒)札幌、盛岡、仙台、千葉、東京、新潟、長野、静岡、名古屋、金沢札幌、仙台、東京、名古屋さいたま、東京
京都、大阪、神戸、松江、岡山、広島、福岡、北九州、熊本、鹿児島、那覇大阪、広島、高松、福岡、那覇大阪
専門(大卒)札幌、盛岡、仙台、千葉、東京、新潟、長野、静岡、名古屋、金沢札幌、仙台、東京、名古屋
京都、大阪、神戸、松江、岡山、広島、福岡、北九州、熊本、鹿児島、那覇大阪、広島、高松、福岡、那覇
教養区分札幌、仙台、東京、名古屋さいたま、東京
大阪、広島、高松、福岡、那覇大阪
出典:人事院「総合職試験受験案内」※院卒は法務区分以外。法務区分は出典元を参照。

専門試験と教養区分ともに一次試験の会場は便利なところを選べて、一次の会場にともなって二次以降の会場が決まります。

地方大学に通う人の場合、二次試験を受けるときにはそれなりの移動を伴うケースが一般的です。

また、特筆すべきポイントとして、教養区分はかつて4都市のみでの開催でしたが、受験資格の引き下げと同様に門戸を広げるために9都市へ拡大されています。

地方大学の人も受けやすくなっており、教養区分の受験はどなたでも真剣に検討すべきといえます。

【2024年最新】国家総合職試験の日程

国家総合職試験の日程

2024年最新の情報として、国家総合職試験の専門試験(院卒・大卒)の日程は以下のとおりです。

試験の種類日程
1次試験3月17日
1次試験合格発表4月1日
2次試験筆記4月14日
2次試験面接4月21日~5月15日
※院卒は4月30日~
最終合格者発表5月28日
官庁訪問開始日6月12日
出典:人事院「総合職試験受験案内

なお、2024年秋試験(教養区分)の日程については現段階では公表されていません。

近年、特に春試験の日程の前倒しが進んでいるのがポイントです。民間面接の早期化に伴い、官庁でも優秀な人材をしっかりと確保するためといえます。

受験生側としては、民間就活との併願などスケジュール管理が重要です。教養区分を合格してしまえば春試験を受ける必要がないことも押さえておく必要があります。

一方で、春試験の実施日が早まるので、試験勉強を始める時期も前年の受験生より前倒しするのがおすすめです。

国家総合職試験に合格する難易度

国家総合職試験に合格する難易度

国家総合職試験は高倍率であり難易度も高い試験ですが、いわゆる難関大学の人だけが合格できる試験というわけではありません。

実際のデータをみると、倍率は専門試験・教養区分ともに高いものの、合格者の大学は幅広いことが分かります。

それぞれ詳しく説明していくので、ぜひチェックしてみてください。

倍率は専門試験・教養区分ともに高い

国家総合職試験の倍率について、専門試験と教養区分はともに高く、最新のデータは以下のとおりです。

試験区分申し込み者数合格者数倍率
春試験(大卒程度)12,886人1,360人9.5倍
春試験(院卒者)1,486人667人2.2倍
秋試験(大卒程度)4,014人423人9.5倍
出典1:人事院「2023年度国家公務員採用総合職試験(春)の合格者発表
出典2:人事院「2023年度国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)教養区分の合格者発表

国家総合職試験の大卒程度の倍率は専門試験と教養区分ともに2023年度は9.5倍であり、難易度の高い試験であるといえます。

院卒者試験の場合は2.2倍と大卒程度に比べると低いものの、ライバルが院に通う同じ専門分野の受験生であるため、簡単に受かる試験ではありません。

厳しい試験を着実に突破するために、後述する出題傾向を押さえた効果的な試験対策が不可欠です。

合格者の大学は幅広い

国家総合職試験の倍率は高いものの、合格者が通う大学は幅広く、最新のデータは以下のとおりです。

国家総合職試験の大学別合格実績
出典:人事院「2023年度国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)教養区分の合格者発表
※合格者が10人以上の大学に絞っている

合格する人の大学は東京大、京都大、早稲田大が上位であるものの、金沢大、鹿児島大、長崎大など地方の大学からも合格者が多く出ていることが分かります。

また、元職員の目線でお伝えすると、霞ヶ関では多様な視点を確保するために地方出身者をできる限り採用しようとする流れがあるため、地方の受験生は歓迎の対象です。

国家総合職試験は難しい試験ですが、都会・地方、大学入学時の偏差値を問わず挑戦すべき試験であるといえます。

国家総合職試験の区分ごとの出題傾向

国家総合職試験の区分ごとの出題傾向

国家総合職試験は区分ごとの出題傾向が毎年ほぼ決まっています。

そのため、試験勉強の際には過去問の内容をしっかり意識して効率的に進めることが重要です。

専門試験と教養区分それぞれ説明するので、ぜひチェックしてみてください。

専門試験は幅広い分野から出題される

国家総合職の専門試験について、もっとも受験者数の多い法律区分の出題傾向は以下のとおりです。

試験段階試験種目内容
1次試験基礎能力択一(知能分野 24問)
・文章理解 10問
・判断・数的 14問
(知識分野 6問)
・自然人文・社会に関する時事・情報 6問
専門択一(必須問題 31問)
・憲法 7問
・行政法 12問
・民法 12問
(選択問題 以下から9問選択)
・商法 3問
・刑法 3問
・労働法 3問
・国際法 3問
・経済学・財政学6問
2次試験専門記述次の5科目から2科目選択
・憲法
・行政法
・民法
・国際法
・公共政策
政策課題討議政策課題に関するグループディスカッション
人物試験個別面接

筆記試験の準備にあたって押さえるべき点は、専門分野の出題範囲が幅広く、かつどの区分も選択問題があることです。

そのため、各出題範囲について、深掘りしすぎずに合格水準を意識しながら知識を身につけていくことが重要といえます。

その他の区分については、以下の人事院のホームページから確認できるので、自身に該当する箇所をチェックしてみてください。

【参考】人事院「総合職試験受験案内

教養区分は政策に関してその場で考える力が問われる

国家総合職試験の教養区分について、出題傾向は以下のとおりです。

試験段階試験種目内容
1次試験総合論文試験以下それぞれ1題ずつ論文を書く
・政策立案の基礎となる教養・哲学的な考え
・具体的な政策課題について
基礎能力択一(知能分野 24問)
・文章理解 8問
・判断・数的 16問
(知識分野 30問)
・自然 10問
・人文 10問
・社会 10問
2次試験企画提案試験・プレゼンテーションシート作成
※課題と資料をもとに解決策を提案する
・プレゼンテーションと質疑応答
※シートの内容を試験官に説明、質疑応答を受ける
政策課題討議政策課題に関するグループディスカッション
人物試験個別面接

ポイントとしては、専門的な知識は問われない一方で、政策課題に関してその場で考える力を問われる度合いが大きいことです。

実際に入省1年目の職員でも、幹部から資料をもとに政策に関する意見を聞かれることがあり、まさに入省後に求められる能力そのものといえます。

過去問をしっかりと確認して実践練習を積みながら、出題傾向に慣れていくのがおすすめです。

【参考】人事院「総合職試験受験案内 (教養)

元職員が分析!国家総合職試験の合格に必要な対策4つ

国家総合職試験の合格に必要な試験対策4つ

国家総合職試験の合格に必要な対策は以下の4つです。

  • 教養区分の合格も視野に前倒しで計画を立てる
  • 過去問を活用した効率的な学習を徹底する
  • 情報戦であることを意識して学習環境を整える
  • 論文や面接の対策は必ずフィードバックをもらう

それぞれについて、元職員である筆者の視点を交えながら解説していきます。

教養区分の合格も視野に前倒しで計画を立てる

大学在学中の場合は、教養区分の合格も視野に入れて前倒しで計画を立てることが重要です。

教養区分は大学二年の秋から受けられるようになり、合格できる確率は上がっています。また、万が一不合格だったとしても、教養区分の勉強は専門試験にそのまま生きてくるので無駄になりません。

教養区分に合格する最大のメリットは、他の就職先との併願が楽になることです。実際に筆者が自身の省庁の内定者と話したとき「教養区分に受かって就活がとてもしやすかった」という声が複数聞かれました。

本記事を読み終わったら、教養区分の受験を検討するためにまずは過去問だけでもチェックするのがおすすめです。

過去問を活用した効率的な学習を徹底する

国家総合職試験の勉強は、過去問を活用して効率的な学習を徹底することが重要です。

かつては試験の席次が重要視されていた時代もありましたが、職員側の視点としては、筆記試験はあくまで最低限の能力の確認であり、圧倒的に重要なのが面接のパフォーマンスです。

合格に向けて過去問をうまく使うためには、たとえば以下の方法が考えられます。

過去問の活用方法
  • 常に過去問を使って合格点や傾向を意識しながら勉強する
  • 過去問を十年分くらいさかのぼり、問題の傾向や考え方に慣れる
  • 過去問を用いて本番と同様に演習を行って実力を図る

過去問は人事院のホームページにて無料で確認できますが、解説が充実している市販の問題を積極的に活用しましょう。

【参考】人事院「試験問題例|国家公務員試験採用情報NAVI

情報戦であることを意識して学習環境を整える

国家総合職試験は情報戦であることを意識して、学習環境を整えることも大切です。

筆記試験の傾向だけではなく、面接や政策討議で聞かれる内容やコツなど多くの情報が出回っています。

特に東京近郊と地方では情報格差がみられるので、地方の学生は積極的に情報を取りに行く必要があります。

筆者は在職中に何人もの学生と話す機会がありましたが、特に面接に関して情報格差があることで明確に有利・不利が存在することを実感していました。

試験に関する情報が取れる場としては、たとえば以下の場が考えられます。

試験に関する情報が取れる場
  • 公務員試験に関する予備校に通う
  • 同じ大学の公務員サークルを積極的に活用する
  • 大学のOBに連絡をとって話を聞く
  • ネット上にある省庁志望者のコミュニティを使ってみる(参考程度)

身近に情報源がない場合には、公務員試験の予備校を使用する方が効率的な場合も多いので検討してみてください。

論文や面接の対策は必ずフィードバックをもらう

試験の論文や面接の対策として、フィードバックをもらいながらスキルを磨くこともポイントです。

特に面接の場合は自分では気づかない癖があり、せっかくの魅力が十分に伝わらず低評価を付けられるケースがあります。

フィードバックをもらう機会としては、論文であれば予備校などの添削を活用し、面接についてはできれば職員にお願いするのがおすすめです。

筆者が受験生だったときには、志望省庁の大学OBに連絡をとって、面接カードを見てもらったり、面接のコツを教えてもらったりしていました。

なお、本記事の筆者は国家公務員志望者に向けた相談サービスを行っています。

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自信をもって試験に臨めるよう丁寧にサポートするので、ぜひ利用を検討してみてください。

効果的な受験対策をもとに国家総合職試験に合格しよう

国家総合職試験まとめ

本記事では、国家総合職試験の概要や難易度・倍率、出題傾向、合格に必要な対策を解説してきました。

国家総合職試験は難易度や倍率が高いものの、合格者のデータをみるとさまざな大学に門戸が開かれていることが分かります。

合格して省庁への面接の切符を手に入れるためには、教養区分を狙いつつ、過去問をベースとした効率的な勉強が不可欠です。

また、論文や面接の対策としては、試験対策のプロや職員からフィードバックをもらう必要があります。

本記事の内容が、国家公務員になって、日本のために生き生きと働く未来の実現に向けた後押しとなれば幸いです。

なお、本メディアでは国家総合職の仕事の魅力や、国家総合職の官庁訪問に関する記事も掲載しているので、ぜひチェックしてみてください。

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この記事を書いた人

筆者は新卒から国家公務員を約7年間勤め、政策の企画立案・調整、調査研究、国会の対応など多岐にわたる業務に取り組んできました。

現在はフリーランスとしてチームを組んで受託事業を中心に取り組みつつ、自身のビジネスも幅広く展開しています。

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