国家一般職は、国家公務員の中でも採用数の多い職種であり、日本全体の政策の実行に携わる魅力的な仕事です。
しかし、インターネット上にはさまざまな情報が溢れており、実態を把握するのは簡単ではありません。
「仕事のやりがいは何か」「やめとけといわれる理由が気になる」「採用されるコツはあるのか」など、疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、元国家公務員の筆者が、国家一般職として働くメリットや働き方、倍率・難易度、採用までの流れについて詳しく解説します。
仕事の実態を知って後悔のない就職の判断ができるよう、ぜひ最後までご覧ください。
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国家一般職とは
国家一般職とは、国の政策運営に携わる国家公務員の中で、主に定型的な事務を担う職種です。
国家総合職が政策の企画・立案に取り組むのに対して、国家一般職は政策の実行や事務を担当します。
人事院の調査によると、行政職の国家公務員(総合職・一般職・専門職)のうち、一般職が全体の約6割以上占めており、まさに行政組織を支える屋台骨です。
また、近年は総合職のポストにつく職員を一般職から公募するケースもみられ、両者の違いは小さくなりつつあります。
国家一般職の具体的な仕事内容は省庁ごと、あるいは本府省・出先機関によって異なります。人事院の採用情報NAVIから、各省庁のサイトをチェックするのがおすすめです。
【参考】
人事院「国家公務員試験採用情報NAVI」
人事院「令和4年度年次報告書」
元公務員が分析!国家一般職として働くメリット
国家一般職として働く主なメリットは、以下の3つです。
- 国全体の政策運営に携われる
- 特定の行政分野に長期間コミットしやすい
- 転勤を伴う異動の機会が少ない
元国家公務員である筆者の視点から、外からは見えにくい魅力について、具体的な経験を交えて説明します。
国全体の政策運営に携われる
国家一般職として働く大きなメリットは、国全体の政策運営に携われることです。
国家公務員の仕事は、社会保障や労働、地方創生、外交・防衛など、社会課題の解決に直結するものが多くあります。
ニュースやSNSにおいて日々話題になる大きな政策の一端に関われるのは、国家公務員ならではの醍醐味です。
元職員の視点からお伝えすると、国家一般職は総合職が決めたことをそのまま執行すると誤解されがちですが、実態は異なります。
総合職が決めるのはあくまで大枠です。個別の事業をどう設計するか、予算がどれくらい必要かなどの企画は、一般職の職員が裁量を発揮する場面が多くあります。
国レベル、地方レベルのスケールの仕事に携われるのは、国家一般職の最大の魅力です。
特定の行政分野に長期間コミットしやすい
国家一般職のメリットとして、特定の行政分野に長期間コミットしやすい点も挙げられます。
出先機関(労働局、法務局、税関など)に就職した場合、その分野に関係する仕事を何年も積み重ねるのが一般的です。そのため、特定分野のスペシャリストになれます。
また、本府省においても、同じ分野の部署に配属され続ける可能性が総合職よりも高いのが実態です。
一つの行政分野は年単位でじっくり担当してこそ、面白さが見えてきます。業界の関係者や自治体ともつながりを作りつつ、その分野に日本一詳しい職員になれるのはやりがいの大きい仕事です。
転勤を伴う異動の機会が少ない
国家一般職は、転勤を伴う異動の機会が少ないこともメリットとして挙げられます。
出先機関の場合は、基本的にその管轄内での部署異動がメインです。本府省の場合も、転勤の多い総合職と比べると、一般職は配属リスクが少ないといえます。
勤務地が予見しやすいことは、とくに出産・子育て・介護などのライフステージに差し掛かる職員にとって重要なポイントです。
もちろん総合職・一般職ともに異動の希望は出せますが、必ず通るわけではありません。国家一般職は、国家公務員という安定したキャリアでありながら、転勤が少ないのが魅力です。
国家一般職の働き方や給料の特徴|やめとけといわれる理由
国家一般職の働き方や給料の特徴として、以下の2点が挙げられます。
- 部署によっては残業が多い場合がある
- 初任給が少なく基本給の伸びが緩やかである
内閣官房のアンケート調査によると、20代~30代で国家公務員を離職したいと思っている職員のうち、長時間労働に不満がある職員が約3割、収入の低さへの不満を抱く職員が約4割もいることがわかっています。
国家一般職は働き方や待遇面で、やめとけといわれる実態があるのは否定できません。就職にあたっては、慎重に検討する必要があります。
【出典】内閣官房「令和4年度職員アンケート調査結果」
部署によっては残業が多い場合がある
国家一般職がやめとけといわれる理由の一つは、配属先の部署によっては残業が多い場合があるためです。
国家一般職の平均的な残業時間は、本府省と出先機関で異なります。
本府省の場合、人事院の調査によると、予算などの忙しい業務を抱える部署で働く職員3.8万人のうち、月100時間以上の残業をした職員が約14%、月平均80時間以上の残業をした職員が約20%もいます。
一方、出先機関の場合は、そもそも多忙な部署に該当することがほとんどありません。
元職員の視点からみると、多忙の実態に関するポイントは以下の2つです。
- 予算や法律などプロジェクトの期間が忙しい
- 残業時間は部署や時期による差が大きい
特定のプロジェクトがあることによって一時的に忙しくなるケースが多く、仕事が一段落すれば残業は減ります。また、人事異動のタイミングで、次は落ち着いた部署に移りやすいのも事実です。
自身が志望する省庁の職員の話を聞いて、実態を把握しておくことをおすすめします。
初任給が少なく基本給の伸びが緩やかである
国家一般職の給料は、初任給が少なく基本給の伸びも緩やかなことも、やめとけといわれる理由です。
国家一般職の収入のモデルケースは、以下の表のとおりです。
役職 | 年齢 | 月収 | 年収 | |
---|---|---|---|---|
本府省 | 係員 | 18歳 | 21万円 | 330万円 |
22歳 | 24万円 | 390万円 | ||
30歳 | 30万円 | 480万円 | ||
係長 | 40歳 | 38万円 | 630万円 | |
課長 | 50歳 | 65万円 | 1070万円 | |
地方機関 | 係員 | 18歳 | 17万円 | 270万円 |
22歳 | 20万円 | 320万円 | ||
30歳 | 24万円 | 390万円 | ||
係長 | 40歳 | 30万円 | 500万円 | |
課長 | 50歳 | 41万円 | 680万円 |
※地方機関は人事院資料の引用。本府省は地方機関の給料に地域手当と本府省業務調整手当を足して算出。
たとえば出先機関に配属された場合、大卒の初任給は年収約320万円、高卒の場合は年収約270万柄、30歳で約390万円、40歳でも約500万円程度にとどまります。ただし、あくまで残業代を含まない基本給です。
内部の職員から見える視点として、給料に関するポイントは以下の2つが挙げられます。
- 景気に左右されない安定性がある
- 若手を中心とした待遇改善が進んでいる
実際、コロナ禍で多くの企業が給料の減額を迫られる中、国家公務員の給料は1%以下の減額にとどまり、ボーナスも満額支給でした。
さらに、近年は若手を中心とした待遇改善が進んでいます。たとえば、国家一般職の大卒の初任給が、月額18.5万円から月額19.6万円と、1万円以上引き上げられました。
一見して給料の金額が少なくみえたとしても、実態を多角的に理解することが重要です。
倍率からみる国家一般職の難易度
国家一般職の採用試験と官庁訪問の倍率をみると、難易度はけっして低くないといえます。なお、官庁訪問とは各省庁にて実施する採用面接です。
人事院によると、国家一般職の採用試験のデータは以下の表のとおりです。
項目 | 大卒程度試験 | 高卒者試験 |
---|---|---|
申し込み者数 | 28,103 | 11,191 |
合格者数 | 8,156 | 3,333 |
採用者数 | 3,446 | 1,399 |
試験倍率 | 3.4 | 3.4 |
採用倍率 | 2.4 | 2.4 |
国家一般職の大卒程度試験・高卒者試験について、人事院の試験の倍率は3.4倍、官庁訪問の倍率は2.4倍という結果でした。
ただし、上記はあくまで全体の倍率であり、実際は省庁ごとに大きく異なります。たとえば、例年人気がある法務局や労働局、経済産業局などは志望者が集中し、官庁訪問はさらに高倍率です。
難易度を正しく把握するには、全体の平均的な倍率と、志望先の倍率の両面からチェックする必要があります。各府省や機関の情報は、以下のページをあわせて確認してください。
【参考】
人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)実施状況」
人事院「国家公務員採用一般職試験(高卒者試験)実施状況」
国家一般職に採用されるまでの流れ
国家一般職に採用されるまでの流れは、以下のとおりです。
- 説明会への参加やOB訪問を通じて志望省庁を決める
- 人事院主催の試験に合格する
- 官庁訪問を突破する
それぞれ解説していきます。
説明会への参加やOB訪問を通じて志望省庁を決める
国家一般職の採用に向けて、まずは説明会やOB訪問を通じて志望省庁を決定する必要があります。
志望省庁や目標が明確になれば、試験対策に集中して取り組め、かつ面接対策を始められるのがポイントです。
各省庁のページやパンフレットによって最低限の情報は集められます。しかし、より実態に近い情報を集めるためには、実際の職員による生の声を聞くことが不可欠です。
説明会やOB訪問を効果的に活用するコツとして、以下が挙げられます。
- 説明会などに出向く際には、どんな情報を得るために行くか目的意識を明確に持つ
- 事前に公表資料を利用して基礎情報をしっかりインプットする
- 説明会で会った職員やOBにしか話せない個別具体的な質問をする
自分の足を使って得られた情報は、志望省庁の決定に役立つのはもちろん、面接試験でのPRとして活用可能です。
人事院主催の試験に合格する
志望先が定まったら、人事院が主催する筆記試験に合格する必要があります。
国家一般職の大卒程度・高卒者程度試験の出題範囲は、人事院の受験案内から確認できるとおり、多岐にわたります。
(参考:人事院「一般職(大卒程度試験)受験案内」「一般職(高卒者試験)受験案内)」)
※高卒者試験の2024年度版の案内は5月7日に公表予定。
元職員の目線でお伝えすると、人事院の試験はあくまで基礎的な事務処理能力の確認にすぎず、重要なのは官庁訪問の面接です。
そのため、試験対策は確実に合格点を取ることに徹する必要があります。具体策な方法の例は以下のとおりです。
- 過去問をベースに、合格最低点を超える戦略を立てる
- 面接試験は採点基準を理解して、練習を積む
- 本格的に対策を始める前に情報収集を徹底する
とくに、地方の受験生などは情報収集の機会が乏しい場合があるかと思います。費用はかかりますが、効率的な努力をするためにも公務員の予備校を利用するのがおすすめです。
官庁訪問を突破する
人事院試験に合格しても、官庁訪問で志望先の省庁から内定をもらえなければ、国家一般職として働けません。
筆記試験の対策はもちろんのこと、並行して省庁の研究や面接対策を進める必要があります。
官庁訪問では、その場での対応力が求められます。提示された議題に対して、すぐに論理的な意見を構築できるのは、公務員になってからも必須の力です。
評価ポイントにしっかりと対応できるよう、実績が豊富な予備校や省庁の関係者に厳しくフィードバックしてもらいましょう。
【2024年最新】国家一般職の試験日程
最後に、2024年度の国家一般職試験の最新日程を紹介します。
大卒程度試験の日程は、以下の通りです。
受付期間 | 2月22日〜 3月25日 |
第1次試験日 | 6月2日 |
第1次試験合格者発表日 | 6月26日 |
第2次試験日 | 7月10日〜 7月26日 |
最終合格者発表日 | 8月13日 |
高卒者試験の日程は、以下の通りです。
受付期間 | 6月14日~6月26日 |
第1次試験日 | 9月1日 |
第1次試験合格者発表日 | 10月3日 |
第2次試験日 | 10月9日〜 10月18日 |
最終合格者発表日 | 11月12日 |
とくに、併願をする際には面接が入れ子になる可能性が高いので、緻密な日程の管理が必要といえます。
官庁訪問の予約を含め、必ず人事院のページから最新情報を随時チェックして、ミスのないよう対応しましょう。
【参考】
人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)」
人事院「国家公務員採用一般職試験(高卒者試験)」
国家一般職への就職は幅広い視点から検討しよう
本記事では、国家一般職として働くメリットや働き方・給料の特徴、難易度・倍率、採用までの流れについて解説してきました。
国家一般職は、さまざまな社会課題の解決に直結する、やりがいのある仕事です。一方、「残業が多い」「低年収」といった負のイメージもあり、やめとけといわれることも少なくありません。
しかし、国家一般職の仕事の実態は、省庁や部署によって大きく異なります。また、給料アップなどの待遇改善も加速しているのが実情です。
本記事の内容や実際の職員の声をもとに、ぜひ幅広い視点から就職を検討してみてください。
なお、本記事の筆者は、国家公務員の面接シートの添削や面接対策などの相談サービスを実施しています。
無料相談も行っているため、総合職との併願を検討されている方も含め、ぜひご活用ください。
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