公務員を辞めるベストなタイミングは?退職の申し出時期や手続きも解説

公務員を辞めるベストなタイミングは?

公務員を辞める決心ができた後には、退職するタイミングや職場に申し出る時期を考える必要があります。

しかし、ほとんどの公務員にとって退職はこれまで経験がなく、身の回りで聞ける人も限られています。

そのため、「退職のタイミングはいつにすべきか」、「何ヶ月前までにどういう伝え方で申し出ればよいか」、「退職日までの流れが分からない」など、疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。

公務員をいつ辞めるか決めるにあたっては、金銭面や退職後の事情、職場への配慮など幅広い視点から考える必要があります。

また、自治体によっては事前申告の時期が義務付けられているなど、知らないと後悔する情報も少なくありません。

そこで本記事では、元公務員の筆者が、公務員を辞めるベストなタイミングや申し出時期、手続きの流れ、辞める前に知っておくべきことについて、経験を交えて徹底的に解説します。

スムーズに退職して新天地で活躍できるよう、ぜひ最後までご覧ください。


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目次

公務員を辞めるベストなタイミング

公務員を辞めるベストなタイミング

公務員を辞めるベストなタイミングはさまざまな観点から総合的に考える必要があります。

退職の時期に関して重要なポイントは以下の3つです。

  • 収入面では夏のボーナスを受給した後がお得である
  • 長期的には転職や起業の都合を優先するとよい
  • 職場の引き継ぎがうまくいく節目が望ましい

自身の収入面やキャリアを優先しつつ、周囲にも配慮しながら退職時期を検討することをおすすめします。

それぞれ詳しく説明していきます。

収入面では夏のボーナスを受給した後がお得である

公務員を辞めるタイミングとして、収入面で考えると夏のボーナスを受給した後の6月頃がもっともお得といえます。

理由は以下の3つです。

6月頃の退職がもっともお得な理由
  • ボーナスをもらうために6月頃か12月頃に辞めるのが得
  • 退職金は勤続年数に応じて増えるので、できるだけ年度初めに近い時期に辞めるのが得
  • 有休が付与されるタイミング、つまり年初or年度初め以降に辞めるのが得

なお、給与について、国は「一般職の職員の給与に関する法律」、自治体は条例等によって細かく決まっています。自身が所属する組織の規定を確認して、シミュレーションすることが大切です。

【参考】e-Gov法令検索「一般職の職員の給与に関する法律

ボーナスは6月頃か12月頃にもらえるから

公務員がボーナスがもらえる基準日は「6月1日」・「12月1日」に在籍していた職員です。ボーナスをもらうためには有給消化も含めて基準日に在籍している必要があります。

重要なポイントは、基準日前1ヶ月以内にやめた場合も支給対象になることです。したがって、5月1日以降か11月1日以降に辞めればボーナスは受給できます。

なお、ボーナスの基準日に関して、国家公務員の場合は人事院規則に、地方公務員の場合は条例などに規定があるので、特に地方公務員の方は条例をチェックしてみてください。

【参考】e-Gov法令検索「人事院規則

退職金は勤続年数に応じて増えるから

国家公務員・地方公務員ともに退職手当の計算式は以下のとおりであり、勤続年数に応じて支給割合が変化します。

退職手当=基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給割合)+調整額

また、以下の2つの理由から3月1日を区切りとして勤続年数が1年加算されます。

  • 勤続年数の算定にあたって端数月は切り捨てで計算される
  • 月のうち一日以上勤務することでその月は勤務したと認められる

このため、基本的には3月1日以降のできる限り早いタイミングで辞めるのが得です。

実際の退職金の違いをみると、たとえば9年間勤務の支給額は俸給月額の4.5倍、10年勤務は5.0倍、11年勤務は7.4倍です。

仮に俸給月額が30万円だとして、勤続年数が1年ずれると数十万円単位で変わることが分かります。

なお、育休などで勤務していない期間があると、勤続年数からその期間の2分の1が除かれるので注意が必要です。

【関連記事】「公務員の退職金はどれくらい?平均額や計算方法について解説

有給休暇は年初か年度初めに付与されるから

公務員の有給休暇は国や自治体の制度で付与されるタイミングが決まっており、多くの場合は年初か年度初めに設定されています。

国家公務員の場合、1月1日に新たに20日分の有給が加算されるので、1月1日以降に有給を消化してから辞めるのが得です。

地方公務員の場合は条例などに規定されているので、ホームページなどで確認する必要があります。

有給は労働者の当然の権利なので、ためらわずにできる限り消化する方向で検討しましょう。

長期的には転職や起業の都合を優先するとよい

長期的にみると、転職や起業の準備の都合を優先するのがおすすめです。

キャリアの都合を優先すると、退職時期によっては退職金などの収入面で損をする場合もあります。

しかし、多少の金額の違いは、転職・起業後にしっかりと働けば数ヶ月で取り返せるものです。

特に転職をする方でまだ入社日が決まっていない場合、あらかじめ自身が希望するタイミングを整理して転職先との調整に臨むことをおすすめします。

実際の事例として、筆者の周囲で転職した同僚も、本来は四半期のタイミングの入社が一般的だったものの、交渉によって希望どおりの時期に入社できたケースがありました。

次の仕事との兼ね合いは、長い目でみたときにはもっとも重要な視点といえます。

職場の引き継ぎがうまくいく節目が望ましい

現在勤務している職場の引き継ぎがうまくいく節目も、公務員を辞めるタイミングとして検討すべきポイントです。

金銭面や転職の都合に悪い影響がない範囲で、職場に負担がかからない節目にやめるのが望ましいといえます。

具体的な節目としては以下の時期が挙げられます。

職場の引き継ぎがうまくいく節目の例
  • 年度末(3月)
  • 年度の中間期(9月~10月)
  • 大型プロジェクトや予算の執行が一段落した時期

ただし、職場への配慮は大切な要素ですが、重視しすぎると自分が損をしてしまう場合があります。

経験談として、筆者は異動時期以外に辞める決断をしましたが、職場への影響を最小限に抑えるため以下の工夫を行いました。

引き継ぎの工夫の例
  • 引き継ぎマニュアルを刷新して、後任者が円滑に引き継げるよう準備
  • 進行中あるいは当面の案件は、方向性を明確にして残された課題を整理
  • 退職後の一定期間は、メールや電話で後任者や同僚をフォロー

職場に迷惑をかけないよう配慮しながら、あくまで自己都合のタイミングで辞めるのが後悔しない選択につながります

何ヶ月前?公務員を辞める意向の申し出時期

公務員を辞める意向の申し出時期

公務員を辞める意向の申し出時期について、ポイントとなるのは以下の2つです。

  • 制度で決まっている期日までに実施する
  • 2ヶ月前~3ヶ月前なら後任を調整しやすい

制度として義務づけられたタイミングを守りつつ、スムーズに辞めるための配慮を可能な範囲で行う必要があります。

それぞれ詳しく説明するので、自身が何ヶ月前に言い出すのがベストか検討してみてください。

制度で決まっている期日までに実施する

公務員を辞める意向の申し出時期が職場の制度で決まっている場合は、ルールに従って行う義務があります。

制度は国家公務員と地方公務員で異なり、地方公務員の場合は自治体によっても差がある点に注意が必要です。

国家公務員の規則は以下のとおりで、退職の申し出の時期に関して明文化はされていません。

人事院規則八―一二(職員の任免)
(辞職)
第五十一条 任命権者は、職員から書面をもって辞職の申出があったときは、特に支障のない限り、これを承認するものとする。

引用元:e-Gov法令検索「人事院規則八―一二(職員の任免)

一方で、地方公務員について、たとえば東京都庁の場合は以下のとおり10日前までに退職願を提出するとされています。

東京都職員服務規程
(退職)
第十四条 職員は、退職しようとするときは、特別の事由がある場合を除き、退職しようとする日の十日前までに、退職願を提出しなければならない。

引用元:東京都例規集データベース「東京都職員服務規程

退職意向の申し出時期に間違いがないよう、お勤め先の規定をしっかりと確認しましょう。

2ヶ月前~3ヶ月前なら後任を調整しやすい

公務員を辞める意向を2ヶ月前~3ヶ月前に申し出れば、職場としては後任を調整しやすいといえます。

特に4月や9~10月といった異動時期以外に辞める場合、後任の確保には長い時間を要するのが一般的です。そのため、できる限り早めに申し出るのが理想ではあります。

実際の事例として、筆者が所属していた省庁において、年度途中で急遽辞める職員の後任が4月まで配属されず、欠員のままだったケースが複数ありました。

また、辞める意向を早めに伝えることで、職場の理解を得やすくなるのもポイントです。急な申し出では、職場の業務に支障をきたす懸念があり、円満な退職が難しくなる恐れがあります。

自分の都合を最優先にしつつ、可能な範囲で早めに伝えるスタンスがおすすめです。

【体験談】公務員を辞める手続きの流れ

公務員を辞める手続きの流れ

公務員を辞めるために必要な手続きの流れは以下の5STEPに分けられます。

  • 直属の上司に辞める意向を伝える
  • 人事担当に報告する
  • 部署内やお世話になった方に報告する
  • 退職届などの必要書類を提出する
  • 最終日には職場に挨拶する

それぞれについて公務員を退職した筆者の実体験に即してポイントを紹介するので、ぜひ参考にしてください。

STEP1.直属の上司に辞める意向を伝える

まずは直属の上司に退職する意向やタイミング、理由などを伝える必要があります。業務の合間に声をかけて、情報が洩れない別室などで行うのがおすすめです。

もっとも重要なポイントは公務員を辞める意思をしっかりと示すことです。曖昧な伝え方だと、まだ続ける可能性があると思われ、自身も職場も無駄な時間労力がかかります。

実際に筆者は退職を申し出た際、以下のようにさまざまな言葉で引き止められました。

「公務員のままでもやりたいことにも挑戦できるんじゃないか」
「業務のために一ヶ月でも長く残って欲しい」
「公務員としては評価されていても他で通用するかは分からない」

職場からの引き止めに感謝を示しつつ、「もう覆しようがない」と思わせる伝え方が必要です。筆者の場合には以下のポイントを強調しました。

退職の時期を明確に示す伝え方
  • 次のキャリアの準備状況について、具体的な進捗を交えて説明する
  • 公務員としてのキャリアに感謝しつつ、新たなステージで挑戦したい意欲を示す
  • 同僚や後任者への引き継ぎについて、万全の準備をしていると伝える

最終的に上司には自身の人生設計に基づく決断であることを理解してもらえ、良好な関係を保って退職できました。

STEP2.人事担当に報告する

上司に対して辞める意向を伝えた後には、人事担当に報告を行います。上司と話す際に、人事担当にも話をすると一言伝えておくとスムーズです。

人事担当とは、より具体的にタイミングや手続きの相談をする可能性があるので、有給の消化も含めて考えを整理しておく必要があります。

筆者が人事担当へ報告した際には、再度翻意を求められたうえで、以下の手続きに関する相談をしました。

退職に関して人事担当と相談した内容
  • 希望する退職日と、その日程で問題がないか確認する
  • 有給休暇の残り日数をもとに、消化方法を相談する
  • 有給消化中の後任へのコンタクト方法を確認する

特に、有給については後任の調整や手続きの関係があり、すべてを消化できないかもしれません。

たとえば、保険や年金の切り替えの手続き上、月末の退職の方がスムーズな場合があり、実際に筆者も有給を数日残して退職しました。

いずれにせよ、人事担当とスムーズに調整できるよう、本記事も参考に必要な知識を持っておくのがおすすめです。

STEP3.部署内やお世話になった方に報告する

公務員を辞める意向を部署内やお世話になった方に報告するのは、人事担当との調整後が望ましいといえます。

公務員は狭い世界であり、話した内容が先に人事課や上司へ伝わってしまう可能性があるためです。

筆者が自身に近しい人へ報告した際には、具体的に以下の点に気を付けました。

自身に近しい人へ伝える際の留意点
  • 退職の日程などがすべて正式に確定してから伝える
  • 挨拶先は現在の関係者だけでなく、入省時から振り返ってリストアップする
  • 対面の挨拶が難しい人にはメールだけでも送るようにする

転職先にも寄りますが、退職後にも昔の役所の知り合いと関わるケースがあるかもしれません。これまでのネットワークを大切にしながら、新たな人脈を広げていくのが理想です。

STEP4.退職届などの必要書類を提出する

人事担当の指示に従って、退職届などの必要書類を提出します。

筆者が国家公務員の退職書類として実際に提出を求められたものは以下のとおりです。

退職時の主な必要書類
  • 退職届(様式をもらって自筆)
  • 退職金関連の書類(振り込み先、税務署に提出するもの)
  • 保険や年金関係の切り替えのための書類

退職届や退職金関連の書類はテンプレートがあるはずなので、それに従えば問題ありません。

また、保険の書類や源泉徴収票は退職後に使う機会があるため、手元に残った書類は最低一年間は保存しておくのがおすすめです。

特に、税金などの手続きにあまり詳しくない場合には、保険や年金、確定申告などに関する基本的な本を一冊通読しておくと、損をせずに進められます。

【関連記事】「公務員は失業保険をもらえない?代わりの手当や手続きの流れも解説

STEP5.最終日には職場に挨拶する

最終日には、お世話になった職場への挨拶回りをします。

最近はメールで済ませることも多いかと思いますが、特にお世話になった方には直接感謝をするのが理想です。

実際に筆者が挨拶回りをしたときに心がけた点は以下のとおりです。

最終日の挨拶周りのポイント
  • 退職理由を聞かれたらポジティブな要素を中心に伝える
  • 定時直後や昼休みなど忙しくない時期を見極める
  • 不在の場合に備えて、置けるメモをあらかじめ用意しておく

特に退職理由を聞かれることが多くあると思いますが、送り出してくれる同僚は公務員として働き続ける決断をしています。

辞める理由はどうあれ、前向きな気持ちも辞める理由の根底にあることを伝えれば、送る側としても気持ちよく送り出せるはずです。

【関連記事】「公務員を辞めたい理由は?退職のメリットや後悔するケースも解説

公務員を辞める前に知っておくべきこと

公務員を辞める前に知っておくべきこと

公務員を辞める前に知っておくべきことは以下の2点です。

  • 社会的信用が落ちる可能性に注意する
  • 退職直後には大きな収入・支出が生じる

それぞれ詳しく説明するので、辞めた後に後悔しないようしっかりとチェックしてみてください。

社会的信用が落ちる可能性に注意する

独立する場合、あるいは転職先の規模によっては、社会的信用が落ちる可能性に注意する必要があります。

公務員はあらゆる職種の中で信用が高く、さまざまな契約がしやすいのが特徴です。

たとえば、以下の予定がある場合には注意する必要があります。

退職後に難しくなる可能性がある契約の例
  • 住宅ローンの借り入れ
  • 賃貸借契約による引っ越し
  • 各種クレジットカードの作成

特に独立する場合には住宅ローンの借り入れなどがほぼ不可能になるといっても過言ではありません。

もし現段階で何らかの契約を行う見込みがある場合、必要な手続きは在職中に済ませておくのがおすすめです。

退職直後には大きな収入・支出が生じる

公務員の退職直後には大きな収入・支出が生じることにも注意が必要です。

大きな収入の代表例が退職金ですが、退職金は国家公務員法や地方自治法によって支給時期が決まっています。

退職金は退職日から1か月以内に支給され、たとえば5月1日や5月31日に退職した場合の振り込みは6月中です。

また、辞めた後の支出として考えられるものは以下のとおりです。

退職後の大きな支出の例
  • 翌年5月までの残りの住民税
  • 年度内の社会保険料(健康・年金)

特に住民税については、年明けの1月以降に退職した場合には5月までの支払い分が一括で退職金から引かれるので注意が必要です。それ以外の時期に退職した場合にも、一括して支払いができます。

また、社会保険料(健康・年金)について、転職先の保険に間を置かず入れない場合などには、自ら収めるのが義務です。

社会保険料は年度末までの分を一括して払うとややお得になるので、月々の保険料からおよその金額を把握しておくことをおすすめします。

【参考】
e-Gov法令検索「国家公務員退職手当法
e-Gov法令検索「地方自治法

公務員を辞める前にタイミングや手続きを入念に検討しよう

本記事では、公務員を辞めるベストなタイミングや申し出時期、手続きの流れ、辞める前に知っておくべきことについて解説してきました。

公務員を辞めるベストなタイミングは、収入面や退職後のキャリア、職場への配慮などから総合的に考える必要があります。

申し出る時期は職場の規定で定められた義務を確認しつつ、2ヶ月前~3ヶ月前に伝えると職場にとってスムーズです。

本記事を参考にタイミングや手続きを入念に検討し、公務員を円滑に退職できることを願っています。

また、退職のイメージをより深めたい場合には、実際の退職経験者に話を聞くことも重要です。

もし身近に経験者がいない方は、本メディアにて元国家公務員の筆者にもご相談いただけます。

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この記事を書いた人

筆者は新卒から国家公務員を約7年間勤め、政策の企画立案・調整、調査研究、国会の対応など多岐にわたる業務に取り組んできました。

現在はフリーランスとしてチームを組んで受託事業を中心に取り組みつつ、自身のビジネスも幅広く展開しています。

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