公務員は失業保険をもらえない?代わりの手当や手続きの流れも解説

公務員は失業保険をもらえない?

公務員からの退職を検討する際に、失業保険(失業手当)をもらえるかどうかは重要なポイントですが、制度が複雑で簡単には理解できません。

「そもそも失業保険の対象になるのか」「代わりの手当はあるのか」「具体的な手続きの流れが分からない」など、疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。

実は、国家公務員や地方公務員は原則として失業保険の対象にはなりません。しかし、代わりに退職手当が支給されるなど、民間企業とは異なる仕組みがあるのが実態です。

本記事では、元公務員の筆者が、公務員への失業保険の適用やもらえない理由、代わりの手当、具体的な手続きの流れなどについて経験を交えて解説します。

退職後の生活設計を考えるうえで欠かせない情報なので、ぜひ最後までご覧ください。

目次

失業保険とは?

失業保険とは?

失業保険とは、仕事を辞めて求職している方が、安定的な生活を送れるようにするための金銭的な手当です。

失業保険の対象となるためには、以下の要件を満たす必要があります。

失業保険の対象となる要件
  • 働く意思があり、ハローワークに求職の申し込みをして求職活動をしている
  • 離職前2年間において、雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上ある
  • 被保険者になる労働者の条件を満たしている
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上である
  • 3日以上の雇用見込みがある

積極的に就職する意思があるものの、現時点では就職先が見つかっていない場合に支給される制度といえます。

失業保険は、原則としてすべての雇用者が加入する雇用保険の一部です。そのため、要件を満たせば雇用形態にかかわらず受給できます。

【参考】厚生労働省「雇用保険制度

公務員は失業保険をもらえない

公務員は失業保険がもらえない

国家公務員や地方公務員は失業保険(失業手当)をもらえません。雇用保険法第6条で、公務員は適用対象外と定められているためです。

公務員の場合は雇用が保障されており、急に仕事を失うリスクはほとんどありません。また、退職金制度も整備されているため、失業保険は不要とみなされています。

ただし、国立大学法人や日本郵政などで勤務していて被保険者だった場合には、例外的に対象となりうる点には注意が必要です。

公務員は原則として失業保険の対象外ですが、自身の勤務先の制度を念のため確認しましょう

【参考】e-Gov法令検索「雇用保険法

公務員は失業保険の代わりに退職手当をもらえる

公務員は失業保険の代わりに退職手当

公務員は失業保険をもらえない代わりに、法律にもとづき退職手当を確実に受け取れます

退職手当の根拠について、国家公務員の場合は「国家公務員退職手当法」です。地方公務員の場合は「地方自治法」にて国家公務員の制度に準じるとされています。

退職手当の計算式は以下のとおりです。

公務員の退職手当の計算方法

退職手当=基本額(退職日の俸給月額×勤続年数に応じた支給率)+調整額

退職手当の支給率は、勤続年数に応じて増えるのがポイントです。年数に応じて増える支給率は、1年目は0.5、2年目は1.0、3年目は1.5と、10年目までは約0.5ずつ上昇していきます。

なお、計算式の中の「調整額」は、勤続年数10年以上の職員のみもらえます。また、勤続1年目の場合には、6ヶ月以上勤めないと退職金がもらえない点に注意が必要です。

退職金の計算方法の詳細を以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

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【参考】
e-Gov法令検索「国家公務員退職手当法」
総務省「地方公務員の退職手当制度について」

公務員は退職手当と失業保険の差額が受け取れる

退職手当と失業保険の差額

もし公務員の退職手当の金額が失業保険の相当額を下回る場合、条件を満たせば差額として「失業者の退職手当」を受け取れます

通常の退職金である「退職手当」とは異なることに注意が必要です。

以下では、「失業者の退職手当」を受け取れる条件と申請の流れを順番に説明します。

差額が受け取れる条件

公務員が退職手当と失業保険の差額として「失業者の退職手当」をもらえる条件は、以下のとおりです。

「失業者の退職手当」が受け取れる条件
  • 原則として、勤続期間が12ヶ月以上である
  • 退職手当の額が、失業保険の相当額に満たない
  • 退職日の翌日から1年以内に失業状態(求職中)にある
  • 退職から一定期間(待期日数)が経過していること

もし勤続年数が1年や2年などと短い場合には、退職手当が失業保険の相当額より小さくなるケースがあります

実際にどちらが大きいかどうかは、基本給や退職のタイミングなどによってさまざまです。そのため、該当しそうな場合、まずは勤務先の担当者に相談する必要があります。

また、本来の失業保険と同様に、受給する時点で求職活動していることが必須です。病気や家庭の事情によって働けない場合には受け取れません。

【出典】内閣官房「失業者の退職手当の支給要件及び支給額算定基準

手続きの流れ

公務員が「失業者の退職手当」を受給する手続きの流れは、以下の4ステップに分けられます

「失業者の退職手当」を受給する手続きの流れ
  • 元の勤務先に「退職票」の交付を依頼する
  • ハローワークに出向き、退職票を提示して求職の申し込みをする
  • 指定された失業認定日に再度ハローワークに行き、失業の認定を受ける
  • 認定後、元の所属先に必要書類を送付し、退職手当を受給する

まずは、勤務先の省庁や自治体、勤務地の管轄組織(教員の場合は教育委員会)に依頼して「退職票」の交付を受けます。人事担当に依頼すれば、スムーズに発行されるはずです。

次に、住所管轄のハローワークに出向き、「退職票」を提示して求職の申込みをします。「雇用保険受給資格者証」が交付されるので、大切に保管するのがポイントです。

そして、指定された失業認定日に再度ハローワークに行き、資格証を提示して失業の認定を受けます。

最後に、認定を受けた後、所属していた省庁や自治体に連絡をして、必要書類を送付します。およそ4週間以内に、指定口座に「失業者の退職手当」が振り込まれる流れです。

以上が一般的な手続きの流れですが、書類の書き方など細かい点は役所によって違いがあります。漏れのないよう担当者とよく相談しながら進めるのがおすすめです。

【参考】
厚生労働省「基本手当について
厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~

【経験談】公務員が失業保険とあわせて知っておくべきこと

公務員が失業保険以外に知っておくべきこと

公務員が退職時に失業保険とあわせて知っておくべきこととして、以下の2点が挙げられます。

  • 退職後にまとまった支出が必要になる場合がある
  • 辞めるタイミングにより金銭面での損得が生まれる

退職手当や失業保険により短期的な収入が得られますが、その他の収支もしっかり整理しておくのがポイントです。

筆者が退職した経験を踏まえて、具体的にお伝えしていきます。

退職後にまとまった支出が必要になる場合がある

公務員を退職するにあたって、まとまった支出が必要になる場合があります。

とくに、失業保険を利用する際には転職先が決まっていないため、住民税や社会保険料を自ら支払うようになるのがポイントです。

住民税について、年明けの1月以降に辞めた場合には5月までに支払うべき金額が退職金からまとめて引かれます。それ以外の時期に辞めると、5月分までの一括払いか分割払いかを選択可能です。

社会保険料についても、国民健康保険に加入して自ら収める必要があります。月ごとに分割で払えますが、よりお得になる一括払いがおすすめです。

筆者の場合、住民税と社会保険料をまとめて支払ったため、退職金80万円程度のうち半分程度がなくなりました。収支計画を綿密に立てて退職することが重要です。

辞めるタイミングにより金銭面での損得が生まれる

辞めるタイミングによって、金銭面での損得が生まれることに注意する必要があります。

とくに、ボーナスをもらえる時期と退職金が増えるタイミングの2つが重要です。

ボーナスの場合は5月1日以降、11月1日以降に在籍していた場合にそれぞれ6月分、12月分のボーナスがもらえます。また、退職金は勤続年数により増えますが、毎年度の4月ではなく3月に年数が更新されるのがポイントです。

筆者の場合は、ボーナスが支給日に在籍していなくても受給できることを知るのが遅くなり、結果的にやや損をしてしまいました。

これから退職時期を検討する方は、少しでも損をしない時期にやめられるよう、タイミングを戦略的に検討しましょう。

公務員を辞めるベストなタイミングについては、以下の記事も参考にしてください。

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公務員の失業保険まとめ

本記事では、公務員の失業保険(失業手当)について、もらえない理由や代わりの手当、具体的な手続きの流れなどを解説してきました。

国家公務員・地方公務員ともに原則として失業保険の対象にはならないものの、その代わりに退職手当が支給されます。

ただし、勤続年数が短い場合には、失業保険の相当額より退職手当が少なくなるケースもあります。条件を満たせば「失業者の退職手当」として差額の受け取りが可能です。

また、退職後の支出や辞めるタイミングによる損得など、失業保険以外の観点からも退職計画を検討する必要があります。

本記事の内容が、公務員の退職をスムーズに進めるための参考になれば幸いです。

なお、本サイトでは公務員を辞めたい理由のまとめや、公務員を退職してフリーランスになった経験談に関する記事を掲載しているので、ぜひご覧ください。

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この記事を書いた人

筆者は新卒から国家公務員を約7年間勤め、政策の企画立案・調整、調査研究、国会の対応など多岐にわたる業務に取り組んできました。

現在はフリーランスとしてチームを組んで受託事業を中心に取り組みつつ、自身のビジネスも幅広く展開しています。

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