国家総合職の年収は低い?年齢別のモデルケースや新卒1年目の給料も紹介

国家総合職の年収は低い?

国家総合職の年収は、国家公務員への就職や転職を考える際の重要な判断材料の一つです。

一方で、「キャリア官僚の年収は本当に低い?」「年収1,000万円は何歳で到達できるのか」など、疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、元国家総合職の筆者が、国家総合職の平均年収や年齢別のモデルケース・推移、新卒1年目の給料、年収事例などについて経験を交えて解説します。

収入面で後悔しない就職の判断ができるよう、ぜひ最後までご覧ください。

目次

国家総合職の平均年収

人事院の調査によると、令和6年の国家総合職を含む行政職の国家公務員の平均年収は約684万でした。平均月収は約41.5万円、平均の基本給(俸給)は約33.6万円であり、調査対象の平均年齢は約42歳となっています(※1)。

ただし、上記の平均年収は国家総合職のみではなく、国家一般職を含めた平均値です。総合職は一般職と比較して昇給スピードが早いため、総合職だけの平均はさらに高くなります。

また、国家総合職の年収を構成する主な要素は、基本給と各種手当です。

詳しくは後述しますが、基本給は「俸給表」という給与テーブルで細かく定められており、年次が上がるごとに年収換算で5万〜20万円程度上昇していきます(※2)。

各種手当の種類としては、以下が挙げられます(※3)。

手当の種類内容
超過勤務手当・正規の勤務時間を超えて勤務した場合に支給される手当
・金額は給与を時給に換算した数字で計算される
期末手当・毎月6月と12月に支給される賞与(ボーナス)の一つ
・月給に応じて機械的に決まる
勤勉手当・毎月6月と12月に支給される賞与(ボーナス)の一つ
・成績(人事評価)に応じてもらえる金額が決まる
地域手当・民間賃金の高い地域に勤務する場合に支給される手当
・東京都特別区は月給の20/100
本府省業務調整手当・本府省で勤務する場合に支給する手当
・課長補佐は3万9,200円、係長は2万2,100円、係員は8,800円
住居手当・賃貸住宅を利用している場合に支給される手当
・最高で月あたり2万8,000円まで
通勤手当・通勤で公共交通機関か自動車などを使う場合に支給される手当
・交通機関は定期代、自動車は通勤距離に応じて金額が決まる
扶養手当・扶養する家族がいる職員に支給される手当
・配偶者は6.500円、子は1万円(16~22歳は1万5,000円)など

このように、国家総合職の年収は基本給と各種手当によって成り立っており、年次によって上昇します。

国家総合職の年収が自分にとって低いかどうか考える際には、単に全体の平均年収をみるだけでなく、年齢ごとの推移を理解することも重要です。

※1 参照:人事院「令和6年国家公務員給与等実態調査の結果」
※2 参照:人事院「俸給表」
※3 参照:人事院「国家公務員の諸手当の概要」

国家総合職の年収推移|年齢別のモデルケース

人事院の公表情報によると、国家総合職の年収推移として、年齢別のモデルケースは以下のとおりです。

役職年齢月収年収
係員22歳28万円467万円
課長補佐35歳45万円757万円
課長50歳76万円1,292万円
局長109万円1,819万円
事務次官143万円2,385万円
※月収と年収は、基本給(俸給)と地域手当、俸給の特別調整額、本府省業務調整手当をもとに算出している
※参照:人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」

国家総合職の22歳の係員がもらう年収は467万円、35歳で課長補佐になると年収は757万円に到達します。国家総合職で年収が1,000万円に到達するのは、40代になってからと読み取れます。

このように、国家公務員は年功序列であり、年齢が上がるにつれてゆるやかに昇給することが特徴です。

ただし、上記の金額は国家総合職が毎月安定してもらえる基本給と手当であり、実際には残業代(超過勤務手当)が加算されます。

残業代の時給は年収を年間の勤務時間で割った金額であり、係員は時給1,500円~2,000円、課長補佐は時給3,000円~3,500円が目安です。

もし課長補佐が毎月30時間残業すると、残業代は月に10万円程、年間で120万円程が加算され、年収は850万円程の水準になります。忙しい部署にいれば、実際には40代手前で年収1,000万円に到達する場合もあります。

国家総合職の新卒1年目でもらえる年収

国家総合職の大学・大学院の新卒が1年目にもらえる月収(初任給)と年収は、以下のとおりです。

区分1年目の収入
総合職(院卒)月収27.8万(年収411万)
総合職(大卒)月収25.0万(年収369万)
参照:人事院「国家公務員の紹介」

表のとおり、国家総合職の院卒1年目の年収は約411万円、大卒1年目の年収は約369万円です。

なお、上記はあくまで基本となる給料であり、実際には残業代(超過勤務手当)が加算される点に注意する必要があります。

特に、1年目の職員は国会の連絡係として配属されることが多いため、月に80時間程度の残業が続くことも少なくありません。

係員の残業代は時給1,500円程が目安のため、もし月に80時間残業した場合、基本給の年収におよそ200万円近くが上乗せされます。

国家総合職と国家一般職・民間企業の年収比較

国家総合職の年収を国家一般職や民間企業の年収と比べると、以下の2つのことがいえます。

  • 国家一般職よりは明らかに高い
  • 民間企業の平均よりは高いが競合と比べると低い

それぞれのデータについて詳しく説明します。

国家一般職よりは明らかに高い

国家総合職の年収を国家一般職の年収と比較すると、総合職の方が明らかに高い水準であることが分かります。

実際に年収のモデルケースで比較すると、以下のとおりです。

区分1年目35歳時点
総合職(大卒)月25.0万(年369万)月43.9万(年731万)
一般職(大卒)月19.6万(年322万)月27.9万(年464万)
参照:人事院「第3回 人事行政諮問会議事務局説明資料」。国家一般職は地方機関の場合。

国家総合職と一般職は1年目の段階で年収に約40万円の差があり、35歳時点で差は約250万円へと広がります

背景にあるのは昇進スピードの差であり、総合職は約4年で係長、約7年で課長補佐に到達するのに対し、一般職は約8年で係長、約17年で課長補佐になるのが一般的です。

総合職は若いうちから責任のある仕事を任されるため、その分給料の差も大きく開いていきます。

民間企業の平均よりは高いが競合と比べると低い

国家総合職の年収を民間企業と比べると、民間企業の平均よりは高いものの、就職先の競合と比べると低くなります。

まず、国家公務員の年収は、企業規模50人以上の企業の年収の水準と釣り合うよう、毎年調整される仕組みです(※1)。総合職は国家公務員全体の中では年収が高いため、企業の平均水準を超えているといえます。

一方で、国家総合職に就職する学生は、より高給な企業に就職できたケースも少なくありません。人事院のアンケート調査によると、入省1年目職員の同級生の就職先は「コンサルタント・シンクタンク」「商社」が人気です(※2)。

例えば、東大生の就職先ランキングに載る企業との初任給の比較は、以下のとおりです。

就職先月収年収
国家総合職約25.0万約369万
野村総合研究所約28.7万約517万
三井物産約27.7万499万
※野村総合研究所と三井物産の金額は公式サイトから引用。ボーナスは口コミサイトを参考に6ヶ月分と仮定して算出。

データをみると、国家総合職の年収が約369万円であるのに対して、就職先の競合となる企業は500万円前後であり、国家総合職の年収水準の方が低いといえます。


※1 参照:人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」
※2 参照:人事院「総合職試験等からの新規採用職員に対するアンケート調査の結果」

国家総合職の年収と成果の関係

国家総合職の年収と成果の関係

国家総合職の年収水準は職員の成果や評価が反映されるものであり、ポイントは以下の2つです。

  • 人事評価に応じて昇給スピードが異なる
  • 半期ごとの成績によってボーナスの金額が異なる

前提として、国家公務員は公務という仕事の性質上、短期の成果で報酬に差をつけることはできません。そのため、給料を増やすよりも、やりがいのあるポストを与えることで優秀な職員へ配慮しています

しかし、その中でも昇給やボーナスによってできる限り待遇の差をつけているのも事実です。

それぞれのポイントを詳しくみていきましょう。

人事評価に応じて昇給スピードが異なる

国家総合職の年収は、年に2回行われる人事評価の結果に応じて、毎年昇給するスピードが異なります。

評価に伴う昇給区分は上からA~Eまであり、評価に応じて基本給(俸給)の上がり具合が決まることがポイントです。

俸給は、A評価なら8号、B評価なら6号、C評価なら4号、D評価なら2号、E評価なら0号それぞれ上がります。各俸給は「俸給表」という一覧表で確認可能です。

例えば、大卒1年目の評価がAかBかCかによって、2年目の給料に以下の差が生まれます。

評価給料の伸び2年目の給料
A評価月1.3万(年15,7万円)月26.3万(年385万)
B評価月1.0万(年11,9万円)月26.0万(年381万)
C評価月0.6万(年7,7万円)月25.6万(年377万)
参照:人事院「俸給表」。大卒1年目は2級1号俸から始まるため、Aは2級9号俸、Bは2級7号俸、Cは2級5号俸になる。

A評価とC評価を比べると、2年目は月収で7,000円ほど、年収だと8万円ほどの差が開くのが実態です。ただし、A評価を取れるのは職員の上位5%、B評価は上位20%であり、誰でも高い評価を取れるわけではありません。

国家総合職の人事評価に応じた昇給スピードの差は、単年でみるとそれほど大きくありませんが、長期的な推移でみると大きな違いになってきます。

半期ごとの成績によってボーナスの金額が異なる

国家総合職の年収の一部であるボーナスは、半期ごとの人事評価で付けられる成績によって金額が異なります。

ボーナスは「勤勉手当」と「期末手当」を足し合わせたもので、1年に2回、合計月収の4.4月分もらえる制度です。

成績をもとに、ボーナスの半分にあたる「勤勉手当」が以下の表のとおり4段階評価で加算・減額されます。

成績加算・減額率
特に優秀119%~200%
優秀107.5%~119%
良好96%
良好でない87.5%
参照:人事院「国家公務員の諸手当の概要」

例えば、勤勉手当の基本額が30万円だとすると、成績により生じるボーナスの幅は26.3万円~60万円です。

成績に応じたボーナスの増減は、企業と比べると小さい傾向にあるものの、国家総合職にも成績に応じた一定のインセンティブはあるといえます。

国家総合職の年収の事例

国家総合職の年収の事例

国家総合職の年収事例として、元国家総合職として約7年間勤めた筆者の年収推移は、以下のとおりです。

年収ベース給残業代
1年目650万円350万円300万円
2年目550万円350万円200万円
3年目650万円360万円290万円
4年目750万円370万円380万円
5年目880万円380万円500万円
6年目900万円390万円510万円
※ここでは、ベース給にボーナスを含める。分かりやすさのため、金額は簡略化している。

筆者の場合、国家総合職の1年目から3年目の役職は係員で年収は550万円~650万円であり、4年目~6年目の役職は係長で年収は750万円~900万でした。キャリアを通じて残業が多めの部署(月平均70~80時間ほど)だったため、年齢別のモデルケースよりは高めに出ています。

3年目あたりまでは残業代が満額でなかったため、金額が抑えられていました。一方で、4年目以降は残業代がすべて出たため、上乗せ分が大きくなっています。若手職員の年収としては、大手の民間企業に劣らないくらいはもらえていたことが分かります。

また、公表データからは見えない実態として、以下の2点が挙げられます。

公表データからは見えない実態
  • 残業代による変動が激しく、残業代が基本給を大きく超えるケースも少なくない
  • 給料や残業時間が多い月でも、労働の密度が高くないときもある

筆者の事例のとおり、年収の多くは残業代に支えられており、年や部署によって金額が大きく異なります。なお、筆者が例外ではなく総合職の若手はみな長時間労働になりやすく、同期の多くも同様の年収水準でした。

さらに、長時間労働は当然是正されるべきですが、国会の質問が出てくるまでただ「待機」している時間も多くあります。そのため、筆者としては労働の密度以上に高い給料をもらえていると感じることもありました。

国家公務員への就職を考える際には、こうした職員のリアルな声を聞いて、自身にとって妥当かどうか判断することをおすすめします。

国家総合職の年収を改善する動き

国家総合職の年収を改善する動き

国家総合職の年収を改善する動きには、以下の2つが挙げられます。

  • 基本給・初任給の引上げを中心とした待遇改善
  • 成果を踏まえた給与体系へのシフト

国家総合職の年収は決して固定化されたものではなく、特に近年は金額の引上げなど改善の動きが進んでいます。政府が優秀な国家公務員の確保に向けた取り組みに本腰を入れているのは、就職の判断にあたって押さえておくべき事実です。

それぞれのポイントを詳しく説明します。

基本給・初任給の引上げを中心とした待遇改善

国家総合職の年収に関する動きとして、基本給、中でも初任給が大きく引き上げられたことが待遇改善でもっとも大きなトピックといえます。

令和5年の初任給の改善は33年ぶりの高水準であり、具体的な引上げ幅と現在の給料は以下のとおりです。

区分引上げ幅現在の給料
総合職(院卒)月1.0万円(年16万円)月27.8万(年411万)
総合職(大卒)月1.4万(年21万)月25.0万(年369万)

入省後の基本給についても、係員は勤続年数に応じて2.8%~5.2%、係長も1.0%引き上げられています。さらに、ベースとなる給料の引上げとあわせて以下の取り組みも進められているのもポイントです。

基本給以外の待遇改善
  • ボーナスの水準を0.10月分引き上げて4.4月分から4.5月分に
  • テレワークを月に10日以上活用する職員に月額3,000円の手当を支給する

優秀な人材の獲得が厳しい中で、若手を中心に据えた待遇改善を今後も続けていくと人事院が表明しています。

参照:人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」

成果を踏まえた給与体系へのシフト

国家総合職の年収を改善する動きとして、職員ごとの成果や評価をできるだけ還元する給与体系へシフトしている点も重要です。

人事院は令和6年度から個人の能力や実績に応じた制度へアップデートすると表明しており、具体的には以下の検討が行われています。

成果を踏まえた給与体系の検討
  • 優秀な評価を獲得した若手~中堅の基本給の上限幅を引き上げる
  • 管理職の給料を職責や職務の内容に応じたものへと見直していく
  • 優秀な成績を収めた職員へのボーナスの加算上限について、現状の2倍よりさらに広げる

これまでのネガティブなイメージを刷新するため、給与体系の変更へと踏み込み始めていることが事実です。

参照:人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」

国家総合職の年収への理解を深めて後悔のない選択をしよう

国家総合職の年収まとめ

国家総合職の基本給は、国家一般職や民間平均と比べると高いものの、就職先として競合する企業と比べると低いのは事実です。

一方で、残業代を含めると大手企業の年収と遜色ない収入であるケースも少なくありません。また、初任給の引き上げをはじめ、若手を中心とした待遇改善の動きが進んでいるのも注目すべき点です。

本記事を参考に国家総合職の年収を幅広い視点で理解して、後悔しない選択をしましょう。

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この記事を書いた人

筆者は新卒から国家公務員を約7年間勤め、政策の企画立案・調整、調査研究、国会の対応など多岐にわたる業務に取り組んできました。

現在はフリーランスとしてチームを組んで受託事業を中心に取り組みつつ、自身のビジネスも幅広く展開しています。

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