国家一般職の官庁訪問ガイド!流れ・難易度・人気のある省庁一覧も紹介

国家一般職の官庁訪問ガイド

国家一般職の官庁訪問とは、人事院の1次試験合格後に実施される面接試験であり、志望省庁の採用のために不可欠な選考です。

一方で、「官庁訪問全体の流れや日程が分からない」「落ちる原因や対策方法を知りたい」など、疑問や悩みを持っている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、元国家公務員の筆者が、国家一般職の官庁訪問の概要や日程、難易度・倍率、人気のある省庁一覧、落ちる原因などについて経験を交えて解説します。

官庁訪問に合格して国家公務員として活躍する夢を実現できるよう、ぜひ最後までご覧ください。


その他の採用区分について以下の記事を掲載しています。

※本記事はあくまで個人の見解をまとめたもので、組織としての方針とは関係ありません。

目次

国家一般職の官庁訪問とは

国家一般職の官庁訪問とは、一次試験の合格者が志望省庁に出向いて、省庁とのマッチングを行う選考プロセスのことです。

一次試験に合格しただけでは内定を得られず、官庁訪問で各省庁から採用されなければ、たとえ二次試験に進んでも最終的に働くことはできません。

毎年、官庁訪問に関する日程やルールが人事院によって公表されており、志望者はルールに従って志望省庁を訪問する必要があります。

参照:人事院「国家公務員試験採用情報NAVI

選考プロセスと業務説明を兼ねている

国家一般職の官庁訪問は、志望省庁と志望者のマッチングを行う選考プロセスだけでなく、働く魅力を伝えるための業務説明の役割も兼ねています。

各省庁の職員は、受験生が入省して実際に活躍できるか判断するため、志望度や能力を入念にチェックします。

一方、志望者にとっては、志望省庁の仕事内容や雰囲気をより詳しく知り、自分の就職先として適切かどうかを判断する重要な機会です。

元職員の目線として、官庁訪問は仕事の合間に面接を行い、業務について志望者と議論することを楽しみにしている職員も少なくありません。

官庁訪問はともに頑張る仲間を見つける場と位置付けられていることを意識すると、少し気が軽くなると同時に、対策のヒントも見えてくるはずです。

省庁によってルールや形式はさまざまである

国家一般職の官庁訪問は、毎年全体の方針が少しずつ変わるだけでなく、各省庁が独自に実施するため、そのルールや形式は省庁によっても異なります。

訪問の申し込み方法や日程、提出書類などは、必ず事前に志望省庁の採用サイトで確認しておく必要があります。

また、官庁訪問の実施場所は採用後の勤務地と同じで、基本的には志望者の住所に近い出先機関か、霞ヶ関の本府省です。ただし、技術系の場合は勤務地に関わらず都合のよい場所で受けられます。

準備にあたっては、各省庁の採用情報を細かくチェックし、スケジュール管理を徹底することが大切です。

内々定に向けては、公式の情報以外にも採用イベントや予備校の情報、OB訪問など、さまざまな場で情報を集めることが鍵となります。

【2024年最新】国家一般職の官庁訪問の日程・流れ

2024年、国家一般職(大卒程度)の官庁訪問の日程・流れは以下のとおりでした。

【2024年】国家一般職の官庁訪問の日程・流れ
出典:人事院「2024年度版 官庁訪問ガイド 一般職試験(大卒程度試験)

官庁訪問は人事院の一次試験に合格した後の7月2日からスタート、訪問する省庁への事前予約は6月26日9時から行えました。

制度上は、 7月10日から7月28日までの訪問禁止期間以外は訪問を受け付けていますが、基本的には7月2日以降に内々定者の多くが固まっていきます。

また、訪問した際の流れは官庁や年度ごとに異なり、数日間に分けて何度も面接を設定する場合もあれば、一日で終わる場合もあります。

内々定の解禁は8月など夏以降になるのが一般的で、関連する事務手続きを行い、10月に正式な内定式があり、翌年度4月以降に採用となる流れです。

いずれにせよ、官庁訪問の準備や志望省庁の情報収集は、全体の流れを意識しつつ、官庁訪問が始まる日に間に合うよう試験対策と並行して行うことが大切です。

なお、2025年に実施が予定されている国家一般職の官庁訪問日程は、まだ公表されていません。例年、年明けの2月頃に公表される場合が多いため、人事院のホームページをチェックしましょう。

国家一般職の官庁訪問の難易度・倍率

2024年現在に公表されている人事院の最新データによると、国家一般職の官庁訪問について、人事院の試験の申込者数が27,317人、合格者数が7,553人、採用者数が3,446人であり、試験の倍率は3.6倍、官庁訪問の倍率は2.2倍でした(※)。

倍率をみると、試験に合格しても半分以上が採用されないことから、国家一般職の官庁訪問は高倍率であり、難易度はけっして低くないといえます。

ただし、試験に合格しても辞退する人が一定数いることや、省庁によって倍率に大きな開きがあることから、実際の倍率を一概には判断できません。

また近年、国家一般職の採用者数は増加傾向にあり、実質的な倍率は下がっている可能性があります。例えば、行政職の採用者数をみると、2022年度は660人、2023年度は700名の採用実績であり、2024年度は770名が採用される見込みです(※2)。

いずれにせよ、選考試験がしっかりと機能していることに変わりはないので、人事院の試験のみならず、官庁訪問にも万全の準備で臨む必要があります。

※1 参照:人事院「令和4年度 年次報告書
※2 参照:人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)

国家一般職の官庁訪問で人気のある省庁一覧

一般的に、国家一般職の官庁訪問で人気のある省庁には、以下が挙げられます。

  • 労働局
  • 検察庁
  • 経済産業局
  • 法務局
  • 税関

ただし、官庁訪問の倍率は年によって大きく異なり、どういった仕事内容に魅力を感じるかは人それぞれです。そのため、人気があるかどうかは、あくまで就職にあたっての判断材料の一つにとどめることをおすすめします。

それぞれの省庁について詳しくみていきましょう。

労働局

労働局は、地域の雇用を守り、働きやすい環境を実現するための厚生労働省の地方機関です。

主に、企業の労務管理や安全衛生を指導する「労働基準監督署」と、職業紹介や雇用保険を担当する「ハローワーク」の2つの部門が中心となり業務を展開しています。

労働基準監督署では法令違反の疑いがある企業への立入調査や、労働者からのさまざまな相談対応を行います。残業代未払いの解決や、ブラックな労働の是正指導、仕事中の事故による労災認定といった仕事が中心です。

ハローワークでは、失業者に寄り添った就職支援や、地域の求人企業の開拓、失業給付の手続きなど、雇用のセーフティネットを支える役割を担っています。

労働局の魅力は、地域に根差しながら、働く方々の生活と権利を守る仕事ができる点です。また、多くの場合、転勤は同一地域ブロック内に限定されるため、地元での長期的なキャリア形成ができます。

こうした働きやすさとやりがいの大きさから、国家一般職の官庁訪問でも特に人気の高い官庁となっています。

参照:厚生労働省「都道府県労働局パンフレット(2024年度版)」

地方検察庁

地方検察庁は、犯罪を取り締まり、社会の安心・安全を守る法務省の地方機関です。地方検察庁で働く検察事務官は、検察官の右腕として事件の調べから裁判、判決後の手続きまで、幅広い場面で活躍しています。

日々の仕事には、事情聴取への立ち会いや、証拠品の適切な管理などがあります。また、被害に遭われた方からの相談や告訴状の受け付けも、担当業務の一つです。

検察事務官の魅力は、法律の知識を生かしながら、安全な社会づくりに直接貢献できることです。また、公安職として給与面で優遇されており、将来的には試験を経て副検事や検察官も目指せます。

緊張感のある仕事ですが、やりがいを持って仕事ができる環境があるため、国家一般職の官庁訪問でも人気の訪問先です。

参照:検察庁「検察庁パンフレット」

経済産業局

経済産業局は、地域の産業や経済の発展を支える経済産業省の地方機関です。中小企業の支援や新しい産業の育成、エネルギー政策の推進など、地域経済の最前線で幅広い仕事に関わっています

具体的な仕事には、創業を目指す方への相談対応や補助金の審査、省エネ設備の導入促進などがあります。また、地元企業を訪問して経営者と直接話し合ったり、大学や自治体と一緒に地域活性化のプロジェクトを進めたりする機会も豊富です。

経済産業局の魅力は、机上で政策立案をするだけでなく、現場で企業の成長や地域の発展を直接感じられる点です。本省勤務の機会もあり、キャリアの幅を広げやすい環境も整っていることから、国家一般職の官庁訪問でも多くの志望者が訪問しています。

参照:関東経済産業局「採用パンフレット」

法務局

法務局は、日々の生活におけるさまざまな権利を守るための法務省の地方機関です。不動産の登記や会社の登記、戸籍の管理など、生活に身近な法律サービスの窓口として、大切な役割を果たしています

日々の仕事には、家を買ったときの所有権の登記や、会社を設立するときの法人登記の審査などがあります。また、戸籍・国籍に関する相談対応や、土地の境界をめぐるトラブルの解決支援なども担当業務の一部です。

法務局の魅力は、法律の知識を活かしながら、地域の人々の暮らしを直接支えられることです。法律に関する研修制度が充実しており、就職時に専門知識がなくても安心してスキルを磨けることから、国家一般職の官庁訪問で人気を博しています。

参照:法務局「令和6年度パンフレット」

税関

税関は、日本の「空の玄関」「海の玄関」として、暮らしの安全と貿易の発展を支える財務省の地方機関です。空港や港の最前線で、輸出入の手続きや、不正な物品の水際取締りなど、幅広い業務を担っています

具体的な仕事は、輸出入される荷物の検査や通関手続き、旅行者の手荷物検査などです。また、貿易に関する相談対応や、地域の企業支援も仕事に含まれます。

税関の魅力は、国際的な雰囲気の中で、専門性の高い仕事にチャレンジできることです。若手でも重要な仕事を任されるため、やりがいを感じやすい職場として国家一般職の官庁訪問で人気があります。

参照:税関「令和6年度一般職採用パンフレット」

国家一般職の官庁訪問に落ちる原因

国家一般職の官庁訪問で落ちる原因には、以下が挙げられます。

  • 志望動機に説得力がないため
  • 仕事内容や働く環境への理解が不十分なため
  • 対人能力に不安な点があるため

それぞれ詳しくみていきましょう。

志望理由に説得力がないため

面接でもっともよく聞かれる志望動機に説得力がないと、面接官に志望者の魅力が伝わらず、国家一般職の官庁訪問で落ちる原因となります。

面接官が志望理由の質問で求めているのは、内容の立派さではなく、回答を通じて分かる志望者の人となりや価値観です。

例えば、以下のような志望動機では十分な評価を得ることはできません。

志望理由に説得力がない例
  • パンフレットやホームページにある抽象的な理念ばかり説明している
  • 実体験と結びつけられておらず、その人自身の個性や考えが伝わらない
  • 入省後のキャリアプランが短期的なもので、長く働き続ける展望がみえない

面接官の視点でお伝えすると、多くの志願者を連続で面接している中で、最初の志望動機が「すんなり納得できるかどうか」で印象が大きく変わります。

自分では気づきにくい視点なので、面接練習などで周囲の人に厳しくチェックしてもらうことがおすすめです。

仕事内容や働く環境への理解が不十分なため

志望先の仕事内容や働く環境に対するリサーチが不足しており、認識が曖昧だと感じさせてしまうことも、国家一般職の官庁訪問で落ちる原因の一つです。

面接においては業務に関するやりとりが必ずなされますが、イメージが十分に湧いていないと的確に答えられず、面接官から高く評価されません

例えば、面接官は以下の観点で志望者に質問を行い、仕事への理解度を確認します。

仕事や働く環境への理解度を確かめる観点の例
  • 省庁のミッションや課題をどれだけ具体的に把握しているか
  • 入省後の仕事内容や日々の業務に関するイメージを具体的に持てているか
  • 労働環境の厳しさをどこまで具体的に理解できているか

特に近年は国家公務員の若手の離職率が向上しており、厳しい部署に配属されても前向きに働き続けられるかは重要なポイントです。

国家一般職の業務の実態について、具体的に情報を集めて、イメージを固めておく必要があります。

対人能力に不安な点があるため

国家一般職の官庁訪問では、面接での受け答えから対人能力に懸念点があると判断されて、落ちてしまうこともあります。

国家一般職は、職場の同僚や上司はもちろん、関係省庁や自治体、国民など多くの人と関わり、協力しながら進めていく仕事です。

そのため、面接で以下のような印象を与えてしまうとマイナス評価につながります。

対人能力に不安な点があると思われる例
  • 質問の趣旨を理解せずに的外れな回答をしている
  • 過度に緊張してしまっているようにみえる
  • 言葉遣いが稚拙で社会人としてのマナーが身についていない

職員目線でお伝えすると、官庁訪問においては「自分の隣で働く部下として違和感がないか」というやや感覚的な基準でチェックしている場合が少なくありません。

日々の仕事のコミュニケーションをイメージしながら面接の練習を重ねていくと、採用に近づきます。

国家一般職の官庁訪問で採用されるための対策

国家一般職の官庁訪問で採用されるための対策には、以下の3つが挙げられます。

  • 志望動機を経験や価値観と結びつけて考え抜く
  • 説明会などに足を運んで具体的な情報を集める
  • 合格者のレベルを知って練習を積み重ねる

落ちる理由を一つでも無くして、プラスに評価されるポイントを増やしていくことが重要です。

それぞれ詳しくみていきましょう。

志望動機を経験や価値観と結びつけて考え抜く

国家一般職の官庁訪問で高い評価を得るためには、志望動機を自らの経験や価値観と結び付けて考え抜き、説得力のあるものに仕上げることが重要です。

自身の準備している志望動機が誰でもいえるものではなく、自分だからこその言葉かどうかをチェックする必要があります。

例えば、志望動機の作成にあたっては、以下のように自分の過去を掘り下げて考えてみましょう。

志望動機の作成のポイント
  • 一般職の仕事に関心を持ったきっかけの出来事は何か
  • 志望先の省庁の理念と自身のこれまでの価値観はどう結びつくか
  • どの分野の課題を具体的にどう変えていくことに行政官として貢献したいか

筆者が実際に面接をしていても、抽象的な理念はほどほどに、経験や価値観などを交えて個人の魅力が伝わるストーリーを話す志望者は魅力的にみえました。

過去を振り返る時間を十分に確保して、誰が聞いても納得できるような理由を考え抜くことがポイントです。

説明会などに足を運んで具体的な情報を集める

国家一般職の官庁訪問に向けては、志望先の業務内容を具体的にイメージできるよう、説明会などに足を運んで情報収集を欠かさないことも大切です。

インターネットやパンフレットを通じた理解も重要ですが、ネガティブ点も含めた具体的な仕事内容や働き方の実態は、自身で情報を集める必要があります。

例えば、以下のような情報収集の機会を活用可能です。

情報収集の機会の例
  • 志望省庁が開催する説明会や相談会に積極的に出向く
  • 内定者や若手職員などにOB訪問をお願いする
  • 公務員志望者のコミュニティや関連のイベントに参加する

説明会などでのポイントは「その相手だからこそ話せる内容」について質問することであり、公表されている情報を学んでも意味がありません。

自分の足で集めた情報は独自性があり、就職するかどうかの判断材料になるだけでなく、面接においても差別化の要素として役立ちます。

合格者のレベルを知って練習を積み重ねる

国家一般職の官庁訪問の対策として、すでに合格した方のレベル感を理解して、同程度の実力をつけるよう練習を積み重ねることも重要です。

実際の合格者がどういった面接カードを書き、どんな受け答えをしているか把握すれば、効率的な準備ができるようになります

また、面接練習で厳しいフィードバックを受ければ、対人能力の不安な点も含めて合格水準まで改善可能です。

練習方法としては、実際に志望する省庁のOBや公務員試験の予備校の講師など、面接経験が豊富にある人から指導を受ける必要があります。

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どんなに準備を重ねても職員の評価軸からポイントがずれていると、採用されずにせっかくの準備が全て無駄になってしまいます。

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国家一般職の官庁訪問に向けて幅広い情報をもとに準備を進めよう

国家一般職の官庁訪問は、筆記試験に合格した後の重要な選考プロセスです。

倍率からみると難易度は低いといえず、志望理由に納得感がないことや、仕事内容への理解が不十分といった点がマイナス評価に直結します。

採用を勝ち取るためには、幅広い情報をもとに志望動機の深堀りや面接対策などを的確に進めていくことが重要です。

本記事を参考にして、国家一般職として活躍する夢を実現するために、幅広い情報をもとに準備を進めましょう。

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この記事を書いた人

筆者は新卒から国家公務員を約7年間勤め、政策の企画立案・調整、調査研究、国会の対応など多岐にわたる業務に取り組んできました。

現在はフリーランスとしてチームを組んで受託事業を中心に取り組みつつ、自身のビジネスも幅広く展開しています。

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