【2025年】国家総合職試験ガイド!日程・難易度・合格に必要な対策を解説

【2025年】国家総合職試験ガイド

国家総合職試験とは、志望省庁の面接を受けるために合格が必須の試験であり、公務員試験の中でも最難関として位置づけられています。

国家公務員志望者のなかには「試験はどれくらい難しいのか」「勉強のコツはあるのか」など、疑問や悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、国家総合職試験の概要・日程や難易度、出題傾向、合格に必要な対策について、元職員が経験を踏まえて解説します。

国家総合職試験を突破して志望省庁への面接にスムーズに進めるよう、ぜひ最後までご覧ください。

目次

国家総合職試験とは

国家総合職試験とは、政策の企画・立案や調査・研究を行う国家公務員を採用するための試験です。試験の内容は筆記試験や面接、集団討議など、多岐にわたります。

1次試験と2次試験に合格することで、各省庁の面接選考である官庁訪問をする権利を得られ、志望省庁に採用されたら国家公務員になれる仕組みです。

試験制度は毎年少しずつ変更されており、人事院のホームページやX(旧Twitter)を参照しながら、最新の情報を収集することが重要です。

参照:人事院「試験情報」

試験区分

2024年度の国家総合職の試験区分は、以下のとおりでした。

時期院卒者試験大卒程度試験
春試験(専門試験)行政、人間科学、デジタル、工学、数理科学・物理・地球科学、化学・生物・薬学、農業科学・水産、農業農村工学、森林・自然環境、法務政治・国際・人文、法律、経済、人間科学、デジタル、工学、数理科学・物理・地球科学、化学・生物・薬学、農業科学・水産、農業農村工学、森林・自然環境
秋試験(教養区分)教養
参照:人事院「総合職試験受験案内

表のとおり、国家総合職試験は院卒者試験と大卒程度試験に分かれており、実施時期によって受けられる試験区分が異なります

春に開催される専門試験の場合は、大学や大学院で学んだ専門性に合わせて受けられることが特徴です。一方で狭き門ではありますが、秋試験として専門性が問われない教養区分も受験可能です。

院卒・大卒は官庁訪問の際には基本的に同じ採用枠を争い、入省後も同じ年次として並びで昇進していきます。院卒の試験区分の方が大卒よりも初任給は数万円程度高くなります。

なお、院卒であれば、原則として大卒程度試験ではなく、院卒者試験を受けることが人事院から推奨されている点に注意が必要です。

受験資格

2024年度の国家総合職の専門試験と教養区分の受験資格は、以下のとおりでした。

専門試験(院卒)専門試験(大卒)教養区分
・平成6年4月2日以降生まれ
・院卒又は令和7年3月までに卒業見込み
・平成6年4年2日~平成15年4月1日生まれ
・平成15年4月2日以降生まれで、大卒又は令和7年までに卒業見込み
・平成6年4年2日~平成17年4月1日生まれ
・平成17年4月2日以降生まれで、大卒又は令和7年までに卒業見込み
参照:人事院「総合職試験受験案内」※院卒は法務区分以外。法務区分は出典元を参照。

国家総合職の専門試験は大学3年次、院卒者試験は院の1年次または2年次に受けることが想定されています。

特筆すべき点として、教養区分は年齢要件が引き下げられてきており、現在は大学2年秋の時点で受けられることです。

国家公務員の受験者数が年々下降傾向にあり、少しでも採用者の間口を広げる狙いから、年齢要件の引き下げが進められています。

全体の流れ・時間割

2024年度の国家総合職試験における全体の流れ・時間割は、以下のとおりでした。

試験区分試験段階試験種目解答時間
専門試験(院卒)1次試験基礎能力択一2時間20分
専門択一3時間30分
2次試験専門記述3時間
政策討議1時間30分
面接
専門試験(大卒)1次試験基礎能力択一2時間20分
専門択一3時間30分
2次試験専門記述3時間
政策討議2時間
面接
教養区分1次試験総合論文4時間
基礎能力択一3時間30分
2次試験企画提案2時間30分
政策討議1時間30分
面接
参照:人事院「総合職試験受験案内 (専門)」「総合職試験受験案内 (教養)
※各試験種目の内容は後述。
※院卒は法務区分以外。法務区分は出典元を参照。

いずれの区分も共通しているのは、1次試験が択一問題中心であるのに対し、2次試験は人数が絞られて、記述力や対人能力が時間をかけてチェックされることです。

国家総合職試験では、筆記・人物試験ともに試験内容をしっかり把握して、幅広い視点から対策する必要があります。

なお、試験の流れの中には含まれませんが、以下のように英語試験による加算点があることにも注意が必要です。

英語試験による加算点
  • 以下のいずれかを満たせば15点加算
    • TOEFL 65以上80未満
    • TOEIC 600以上730未満
    • IELTS 5.5以上6.5未満
  • 以下のいずれかを満たせば25点加算
    • TOEFL 80以上
    • TOEIC 730以上
    • 英検1級又は準1級

多くの受験生は英語による加点を活用しているため、TOEFLやTOEICは余裕をもって受験をしておきましょう。

参照:人事院「総合職試験受験案内 (専門)

試験会場

2024年度、国家総合職試験の会場は以下のとおりでした。

試験区分一次 二次(筆記)二次(人物)
専門(院卒)札幌、盛岡、仙台、千葉、東京、新潟、長野、静岡、名古屋、金沢札幌、仙台、東京、名古屋さいたま、東京
京都、大阪、神戸、松江、岡山、広島、福岡、北九州、熊本、鹿児島、那覇大阪、広島、高松、福岡、那覇大阪
専門(大卒)札幌、盛岡、仙台、千葉、東京、新潟、長野、静岡、名古屋、金沢札幌、仙台、東京、名古屋
京都、大阪、神戸、松江、岡山、広島、福岡、北九州、熊本、鹿児島、那覇大阪、広島、高松、福岡、那覇
教養区分札幌、仙台、東京、名古屋さいたま、東京
大阪、広島、高松、福岡、那覇大阪
参照:人事院「総合職試験受験案内」※院卒は法務区分以外。法務区分は出典元を参照。

専門試験と教養区分ともに一次試験の会場は自宅から近い地域を選べ、一次試験の会場をもとに二次試験の会場が決まります

地方の大学に通う方の場合、二次試験を受けるときにはそれなりの移動を伴うケースが一般的です。

また、教養区分はかつて4都市のみでの開催でしたが、受験資格の引き下げと同様に採用の門戸を広げるために9都市へ拡大されています。

地方大学の方も受けやすくなっていることからも、教養区分の受験は誰でも真剣に受験を検討した方がよい選択肢といえます。

【2025年最新】国家総合職試験の日程

2025年度の国家総合職試験の日程は、現段階では公表されていません

2024年は前年の12/25に受験案内が公表されたことから、2025年度も同様に年末・年始に発表される可能性があります。

なお、2024年度における国家総合職試験の専門試験(院卒・大卒)の日程は以下のとおりでした。

試験の種類日程
1次試験3月17日
1次試験合格発表4月1日
2次試験筆記4月14日
2次試験面接4月21日~5月15日
※院卒は4月30日~
最終合格者発表5月28日
官庁訪問開始日6月12日
参照:人事院「総合職試験受験案内

近年、特に春試験の日程の前倒しが進んでいることがポイントです。民間面接の早期化に伴い、官庁でも優秀な人材をしっかりと確保するための対策といえます。

受験生側としては、民間就活との併願などスケジュール管理が重要です。教養区分を合格してしまえば、専門試験である春試験を受ける必要がないことも押さえておく必要があります。

また、春試験の実施日が早まっていることを踏まえ、試験勉強を始める時期もできるだけ前倒しで進めることをおすすめします。

国家総合職試験に合格する難易度・倍率

国家総合職試験は専門試験・教養区分ともに高倍率であり、難易度がもっとも高い国家公務員試験の一つです。

試験区分ごとの合格者数や倍率のデータは、以下のとおりです。

試験区分申し込み者数合格者数倍率
春試験(大卒程度)12,886人1,360人9.5倍
春試験(院卒者)1,486人667人2.2倍
秋試験(大卒程度)4,014人423人9.5倍
参照1:人事院「2023年度国家公務員採用総合職試験(春)の合格者発表
参照2:人事院「2023年度国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)教養区分の合格者発表

国家総合職試験の大卒程度の倍率は専門試験と教養区分ともに2023年度は9.5倍であり、難易度の高い試験であるといえます。

一方で、院卒者試験の場合は2.2倍と大卒程度に比べると低いものの、ライバルが院に通う同じ専門分野の受験生であるため、やはり簡単に受かる試験ではありません。

厳しい試験を着実に突破するために、後述する出題傾向を押さえた効果的な試験対策が不可欠です。

国家総合職試験に合格する方の出身大学

国家総合職試験の倍率は高いものの、都市部や地方問わず、幅広い大学の方が試験に合格しています。

2023年度試験の所属・出身大学別の合格者数は、以下のとおりです。

国家総合職試験の出身大学別合格実績
出典:人事院「2023年度国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)教養区分の合格者発表
※合格者が10人以上の大学に絞っている

国家総合職試験に合格する方の大学は東京大、京都大、早稲田大が上位であるものの、金沢大や鹿児島大、長崎大など地方の大学からも合格者が多く出ていることが分かります。

また、元職員の目線でお伝えすると、霞ヶ関では多様な視点を確保するために地方出身者をできる限り採用しようとする流れがあるため、地方の受験生はむしろ歓迎の対象です。

国家総合職試験は簡単に突破できるわけではないものの、地域や大学入学時の偏差値などを問わず、熱意があれば積極的に挑戦すべき試験といえます。

国家総合職試験の区分ごとの出題傾向

国家総合職試験は日程や受験資格などは少しずつ変化している一方で、区分ごとの出題傾向は毎年ほぼ決まっています。

そのため、試験勉強の際には過去問の内容をしっかり意識して効率的に進めることが重要です。

専門試験と教養区分それぞれについて詳しくみていきましょう。

専門試験は幅広い分野から出題される

国家総合職の専門試験では法律や経済、人間科学など区分が分かれており、いずれの区分でも幅広い分野から出題されます。

受験者数のもっとも多い法律区分の出題傾向は、以下のとおりです。

試験段階試験種目内容
1次試験基礎能力択一(知能分野 24問)
・文章理解 10問
・判断・数的 14問
(知識分野 6問)
・自然人文・社会に関する時事・情報 6問
専門択一(必須問題 31問)
・憲法 7問
・行政法 12問
・民法 12問
(選択問題 以下から9問選択)
・商法 3問
・刑法 3問
・労働法 3問
・国際法 3問
・経済学・財政学6問
2次試験専門記述次の5科目から2科目選択
・憲法
・行政法
・民法
・国際法
・公共政策
政策課題討議政策課題に関するグループディスカッション
人物試験個別面接

国家総合職の筆記試験では、すべてを完全にカバーするのが困難なほど出題範囲が広く、かつどの区分も選択問題があります。

そのため、各出題範囲について、深掘りしすぎずに合格水準を意識しながら知識を身につけていくことが重要です。

法律以外の区分についても、人事院の資料にアクセスして、自身が受ける区分の出題範囲をチェックしましょう。

参照:人事院「総合職試験受験案内

教養区分は政策に関してその場で考える力が問われる

国家総合職試験の教養区分の場合、専門試験のような専門知識は問われない一方で、政策課題について臨機応変に考える力が求められます。教養区分の出題傾向は、以下のとおりです。

試験段階試験種目内容
1次試験総合論文試験以下それぞれ1題ずつ論文を書く
・政策立案の基礎となる教養・哲学的な考え
・具体的な政策課題について
基礎能力択一(知能分野 24問)
・文章理解 8問
・判断・数的 16問
(知識分野 30問)
・自然 10問
・人文 10問
・社会 10問
2次試験企画提案試験・プレゼンテーションシート作成
※課題と資料をもとに解決策を提案する
・プレゼンテーションと質疑応答
※シートの内容を試験官に説明、質疑応答を受ける
政策課題討議政策課題に関するグループディスカッション
人物試験個別面接

表のように、教養区分の1次試験では政策に関する思考力や一般教養、処理能力などに関する問題が幅広く出題されます。

一方で、2次試験ではグループディスカッションやプレゼンテーション能力など、より実践的な観点で能力を審査されることが特徴です。

実際に入省1年目の職員でも、部局の幹部から、資料をもとに政策に関する意見を聞かれることがあり、まさに入省後に求められる能力そのものといえます。

過去問をしっかりと確認して実践練習を積みながら、出題傾向に慣れていくことがおすすめです。

【参考】人事院「総合職試験受験案内 (教養)

国家総合職試験の合格に必要な対策

国家総合職試験の合格に必要な対策には、以下の4つが挙げられます。

  • 教養区分の合格も視野に前倒しで計画を立てる
  • 過去問を活用した効率的な学習を徹底する
  • 情報戦であることを意識して学習環境を整える
  • 論文や面接の対策は必ずフィードバックをもらう

それぞれについて、元職員である筆者の視点を交えながら解説します。

教養区分の合格も視野に前倒しで計画を立てる

大学在学中に国家総合職試験を受ける場合、専門試験だけでなく、教養区分の合格も視野に入れて前倒しで勉強の計画を立てることが重要です。

近年、教養区分は大学2年の秋から受けられるようになり、合格できるチャンスは着実に広がっています。また、万が一不合格だったとしても、教養区分の勉強は専門試験にそのまま生きてくるため、努力が無駄にはなりません。

教養区分に合格する最大のメリットは、民間企業や他の公務員など、就活の併願がぐっと楽になることです。

実際に筆者が自身の省庁の内定者と話すとき「教養区分に受かって就活がとてもしやすかった」という声が多く聞かれました。

教養区分の受験自体にリスクはないため、まずは人事院のホームページから過去問だけでもチェックしましょう。

過去問を活用した効率的な学習を徹底する

国家総合職試験はあくまで官庁訪問の通過点に過ぎないため、過去問を活用して効率的に学習を進めることが重要です。

かつては試験の席次が重要視されていた時代もありましたが、現在、筆記試験はあくまで最低限の能力の確認であり、面接のパフォーマンスのほうがはるかに重要視されています。

合格に向けて過去問をうまく使うためには、以下の方法が考えられます。

過去問の活用方法
  • 常に過去問を使って合格点や傾向を意識しながら勉強する
  • 過去問を十年分くらいさかのぼり、問題の傾向や考え方に慣れる
  • 過去問を用いて本番と同様に演習を行って実力を図る

過去問は人事院のホームページにおいて無料で確認できますが、解説が充実している市販の問題も積極的に活用しましょう。

参照:人事院「試験問題例|国家公務員試験採用情報NAVI

情報戦であることを意識して学習環境を整える

国家総合職試験は情報戦の性質が強いため、情報収集を徹底して学習環境を整えることも大切です。

試験のノウハウとして、筆記試験の傾向だけではなく、面接や政策討議で聞かれる内容など多くの情報が出回っています

特に東京近郊と地方では情報格差がみられるため、地方の学生は積極的に情報を取りに行く必要があります。

筆者は在職中に何人もの学生と話す機会がありましたが、特に試験や官庁訪問に関して情報格差があることで、明確に有利・不利が存在することを実感していました。

試験に関する情報が取れる場としては、以下が挙げられます。

国家総合職試験に関する情報が取れる場
  • 公務員試験に関する予備校に通う
  • 同じ大学の公務員サークルを積極的に活用する
  • 大学のOBに連絡をとって話を聞く
  • ネット上にある省庁志望者のコミュニティを使ってみる(参考程度)

身近に情報源がない場合には、公務員試験の予備校を活用する方が効率的な場合も多いため、コスト面とあわせて検討しましょう。

論文や面接の対策は必ずフィードバックをもらう

国家総合職試験に向けては、試験の論文や面接の対策として、フィードバックをもらいながらスキルを磨くことも不可欠です。

特に面接の場合は自分では気づかない癖があり、志望動機や熱意が十分に伝わらず低評価を付けられるケースがあります。

フィードバックをもらう機会としては、論文であれば予備校などの添削を活用し、面接はできれば職員にお願いすることがおすすめです。

筆者が受験生だったときには、志望省庁の大学OBに連絡をとって、面接カードを見てもらったり、面接のコツを教えてもらったりしていました。

また、本記事の筆者は国家公務員志望者に向けた相談サービスを行っています。

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効果的な受験対策を行って国家総合職試験に合格しよう

国家総合職試験は難易度や倍率が高いものの、合格者のデータをみるとさまざな大学に門戸が開かれていることが分かります。

合格して省庁への面接の切符を手に入れるためには、教養区分を狙いつつ、過去問をベースとした効率的な勉強が不可欠です。

また、論文や面接の対策としては、試験対策のプロや職員からフィードバックをもらう必要があります。

本記事を参考に、効果的な受験対策で国家総合職試験に合格し、国家公務員として働く未来を実現しましょう。

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この記事を書いた人

筆者は新卒から国家公務員を約7年間勤め、政策の企画立案・調整、調査研究、国会の対応など多岐にわたる業務に取り組んできました。

現在はフリーランスとしてチームを組んで受託事業を中心に取り組みつつ、自身のビジネスも幅広く展開しています。

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