「国家公務員試験にTOEICスコアがないと不利になるのか」「TOEICによる加点の仕組みを知りたい」など、疑問や悩みを持つ方もいるでしょう。
国家総合職試験ではTOEICなどの外部英語試験スコアで最大25点加点される一方、国家一般職試験では加点制度がありません。ただし、試験区分に関わらず、英語力は教養試験対策や面接でのアピールポイントとして役立ちます。
本記事では、元国家公務員の筆者が、国家公務員試験におけるTOEICの位置づけ、加点制度の詳細、スコア提出ルールなどを徹底解説します。効率的な試験対策を進め、自分の強みを最大限活かした合格戦略を立てられるよう、ぜひ最後までご覧ください。
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国家公務員試験におけるTOEICの位置づけ
国家公務員試験において、TOEICスコアの提出自体は必須条件ではありません。しかし、近年の行政のグローバル化に対応するため、外部英語試験を評価に活用する制度が導入されています。
具体的には、国家公務員総合職試験において、以下の外部英語試験のスコアが加点対象となっています。
- TOEIC L&R(Listening & Reading Test)
- TOEFL(iBT)
- IELTS
- 実用英語技能検定(英検)
加点制度は、高い英語能力を持つ多様な人材を確保し、国際的な業務を遂行できる人材採用を目的としています。TOEICスコアは、採用選考だけでなく、入庁後のキャリア形成においても強みとなり、長期的なキャリア計画を考える上でも重要な要素です。
国家公務員試験でのTOEIC加点制度
国家公務員試験でのTOEIC加点制度は、試験区分によって大きく異なります。国家総合職と国家一般職でどのような違いがあるのか詳しく見ていきましょう。
総合職試験ではTOEICスコアにより加点される
国家公務員総合職試験(院卒者・大卒程度)では、外部英語試験のスコアに応じて最大25点の加点が行われます。
英語試験ごとの加点の条件は以下のとおりです。

国家公務員総合職試験でTOEICスコアを提出する場合、600点以上で15点、730点以上で25点が加算される制度となっています。TOEIC 730点は、業務上必要な英語でのコミュニケーションが概ね可能で、比較的複雑な指示も理解できるレベルとされています。
最終合格者の決定にあたって、基礎能力試験および専門試験(多肢選択式)の素点に加算される仕組みです。英語試験のスコア提出は任意ですが、余裕をもって合格するためには加点制度を活用すると効果的です。
国家公務員志望者のTOEIC平均スコアに関する公式なデータは公表されていません。ただし、元国家総合職である筆者の同期は、全員がTOEIC 730点以上を取得していました。国家総合職として入省する人材は、通常、25点の加点を得られる英語力の素養を備えています。
一般職試験はTOEICスコアの加点対象外である
国家公務員一般職試験においては、TOEICを含む外部英語試験のスコアによる加点制度は設けられていません。試験の合格を目指す上で、TOEICスコアの取得は必要なく、英語力に自信がない方でも心配する必要はありません。
一方、教養試験には英語(文章理解)の問題が含まれるため、TOEIC対策で培った英語力は試験対策として役立ちます。高いTOEICスコア獲得に必要な長文読解や語彙力は、教養試験で問われる能力と重なる部分が多いためです。
また、面接試験において、英語力や英語学習経験を自己PRとしてアピールできます。特に国際業務の多い省庁や分野を志望する場合は、英語力の高さによって他の受験者との差別化が図れます。
国家公務員試験におけるTOEICスコアの提出ルール
国家公務員試験でTOEICスコアを提出する際には、スコアの有効期限と必要書類について事前に確認しておく必要があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
提出できるTOEICスコアは5年前のものまで
国家公務員総合職試験で加点申請のために提出できる外部英語試験のスコアは、試験実施年度の4月1日から遡って5年以内に取得したものに限られます。例えば、2025年度の試験であれば、2020年4月1日以降に受験した試験のスコアが有効です。
有効期間は、TOEIC L&Rだけでなく、加点対象となるTOEFL iBT、IELTS、英検も同様です。5年の期間は比較的長いため、大学入学前や入学直後に取得したスコアも活用できる可能性があります。
ただし、TOEIC運営団体(IIBC)が発行する公式認定証の再発行期限は受験日から2年以内です。5年以内のスコアを提出する場合でも、公式認定証を紛失しないよう大切に保管しておく必要があります。
スコア提出には公式認定証が必要
国家公務員総合職試験で外部英語試験の加点を申請する際には、スコアを証明する公式な書類の提出が必要です。TOEIC L&Rの場合は、原則として「公式認定証(Official Score Certificate)」の原本とコピーの提出が求められます。
英語試験による加点を得るためには、公式認定証を第2次試験(人物試験)の際に持参する必要があります。英語試験の申込と受験は、実施団体から証明書類が返送される期間も考慮して計画的に行いましょう。
提出方法や必要書類の詳細は、年度によって細かく変更される可能性があります。そのため、毎年度の人事院の試験案内やウェブサイトを必ず確認してください。
参照:人事院「国家公務員試験採用情報NAVI」
国家公務員試験対策にTOEIC対策が役立つ理由
TOEICは単なる加点のためだけではなく、国家公務員試験全体の対策としても役立つ側面があります。
教養試験対策や面接でのアピールポイントとして活用できる理由を解説します。
教養試験の英語対策に直結する
TOEIC L&Rのリーディング対策で培われる読解力や文法知識は、国家公務員試験(総合職・一般職)の対策に役立ちます。基礎能力試験(教養試験)では、文章理解の一部として英文読解問題が出題されるためです。
TOEICはビジネスや日常生活に関連する幅広いテーマを扱うため、対策を通じてさまざまなジャンルの英文に慣れていきます。特に、ビジネス文書や公的文書の読解に慣れておくことは、教養試験の英語問題対策として有効です。
面接で英語力をアピールできる可能性がある
国家公務員試験の人物試験(面接)や官庁訪問において、高いTOEICスコアや英語学習への取り組みは、自己PRの材料となります。特に、国際的な業務に関わる可能性がある部署を志望する場合、英語力は重要なアピールポイントです。
グローバル化が進む現代では、語学力を持つ人材は多くの省庁で求められています。単なるスコアだけでなく、英語力を支える価値観や経験も含めてアピールできるよう準備しておくと効果的です。
【経験談】国家総合職は英語レベルの高さでキャリアが広がる
国家総合職として採用された後、英語力はキャリアパスの選択肢を広げる上で重要な要素となります。国家総合職であれば、配属先に関わらず英語を用いる業務が必ず存在します。
実際に筆者が国家総合職の若手として携わった業務は、以下のとおりです。
- 自身が担当する政策文書の英訳業務
- 日本で開催されたG7開催に向けたアジェンダや資料の作成
- 海外の機関による日本政府の調査に対する回答
- 海外の政府機関との会議に用いる資料や発言要領の作成
- 海外の機関が公表している調査のまとめ・分析
国際的な業務を担当する部署はもちろん、国内政策を中心に担当する場合にも、TOEICの学習で培われるような英語力は不可欠です。
また、国家総合職には、入省後に海外の大学院への留学プログラムがあります。留学の選抜に際しては、高い語学力が前提となることが多く、TOEFLやTOEICなどの外部試験スコアが参考にされます。
国家公務員試験合格に向けてTOEIC対策を進めよう
総合職試験では最大25点の加点が得られる一方、一般職試験では直接的な加点はありません。いずれの試験でも、教養試験対策や面接でのアピールにTOEICは役立ちます。
総合職志望者は730点以上を目指し、一般職志望者も英語に自信がある場合は面接でのアピールポイントとして活用するとよいでしょう。
英語力は一朝一夕で身につくものではありません。国家公務員試験までの時間に余裕がある方は、試験対策と並行して計画的にTOEICの学習を進めましょう。
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