公務員の退職はキャリアの中で大きな決断であり、けっして簡単に決められるものではありません。
「他の人はどんな理由で辞めているのか」「周りからもったいないと言われる」「退職後に後悔したくない」など、疑問や悩みを持っている方も多いのではないでしょうか。
公務員を辞めたい理由は、新しい挑戦がしたい、今の待遇に不満がある、働き方に耐えられないなどさまざまです。
退職することでやりたい仕事に携われる、給料アップなどメリットは多くありますが、勢いで辞めて後悔するケースも少なくありません。
そこで本記事では、元公務員の筆者が経験をもとに、公務員を辞めたい理由や退職のメリット、後悔するケースなどについて詳しく解説します。
退職にあたって冷静な決断ができるよう、ぜひ最後までご覧ください。
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公務員を辞めたい理由
公務員を辞めたい理由は人それぞれですが、大きく分けると以下の3つが挙げられます。
- 新しく挑戦したい仕事や分野ができたから
- 今の仕事内容や待遇に不満を感じているから
- 働き方や職場の雰囲気に耐えられないから
後悔しない選択をするためには、まず自身が退職したい理由を整理して言語化することが大切です。
なお、内閣官房の調査では、国家公務員の離職意向について以下のとおりまとめられています。
20代~30代で公務員を辞めたい理由の1位が「もっと自己成長できる魅力的な仕事につきたいから」、2位が「収入が少ないから」、3位が「仕事を通じて専門性・スキルが磨かれている実感がないから」です。40代や50代でも、仕事内容に不満を持っている人が多くいます
以下では、筆者自身の経験や元公務員への聞き取りをもとに、具体的な理由や状況を詳しく解説していきます。
新しく挑戦したい仕事や分野ができたから
公務員を辞めたい理由の一つに、新しく挑戦したい仕事や分野ができたというポジティブなものがあります。
とくに事務系の仕事の場合はジェネラリスト的なものが多く、専門性を磨きたい人にとっては物足りなさを感じるケースが少なくありません。
筆者の経験としても、仕事自体にやりがいを感じていましたが、どうしても起業したい分野が見つかり辞める決断をしました。今後10年先を見据えた仕事の展望が自分の中でしっかり描けたためです。
具体的なビジョンが明確にある理由であれば、退職後に後悔する可能性も低いといえます。
今の仕事内容や待遇に不満を感じているから
今の仕事内容や待遇に不満を抱いているのも、公務員を辞めたい理由の一つです。
前述した内閣官房のデータでも、とくに20代・30代の職員は、やりがいや成長に不満を感じるケースが多いことが分かります。
実際に筆者が行った元公務員への聞き取りでも、以下のような不満の声が聞かれました。
- 新しいことへの挑戦が認められず、マンネリを感じた
- 個人として活躍できるスキルが身につく実感がなかった
- 昇進の可能性が限られており、キャリアアップの展望が持てなかった
前例にこだわる古い体制や将来的なキャリアアップの可能性に疑問を感じて辞める、といったネガティブな理由です。
働き方や職場の雰囲気に耐えられないから
働き方や職場の人間関係に対して精神的に限界を感じているのも、公務員を辞めたい理由の一つです。
とくに公務員の場合は、組織の性質上、職場環境を改善する動きが遅くなりがちなことが背景にあります。
元公務員への聞き取りでも、以下のような声が聞かれました。
- 育児があるのに休日出勤や深夜残業が常態化していた
- 噂がすぐ広がるような狭いコミュニティに耐えられなかった
- 住民対応で理不尽なクレームを受け、ストレスを感じていた
前項と同様にネガティブな理由であり、人によっては我慢の限界を超えてしまい、勢いで退職を選ぶケースがあります。
公務員を退職するメリット
公務員を退職する主なメリットは以下の3つです。
- 転職や起業を通じてやりたい仕事に携われる
- 実力や成果が給料・昇進に反映されやすくなる
- 副業や兼業ができる機会が増える
各メリットを詳しく解説します。辞めたい気持ちが強いものの思い切れないと悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください
転職や起業を通じてやりたい仕事に携われる
公務員を退職することで、自分の強みや興味を活かせる仕事にチャレンジできるのは大きなメリットといえます。
公務員になった当初は仕事内容や安定に価値を感じていたとしても、価値観は年月とともに変わるものです。
筆者の元同僚にも、事務系の職種からITベンチャーに転職して生成AIの事業で成功したり、飲食のスタートアップ企業を立ち上げたりと、キャリアを一変させてイキイキと活躍している人がいます。
「このままでいいのか」と疑問を感じているなら、思い切って一歩を踏み出してみるのも十分ありうる選択肢です。
実力や成果が給料・昇進に反映されやすくなる
転職や起業をすると実力主義の色合いが濃くなり、成果に応じて給料や役職もアップしやすいこともメリットといえます。
公務員は仕事の性質上、数値目標などがなく、成果がただちに待遇へ反映されにくいのが実情です。
差がつきにくい評価制度により、実際の実力を下回る評価や待遇にとどまる公務員が多くいることに、筆者自身も退職してから気づきました。
もし今の実力への評価に不満があり辞めたいと思っているのであれば、退職によって大きなチャンスが広がります。
副業や兼業をできる場合が多い
公務員を辞めると副業や兼業をできる場合が多いこともメリットとして挙げられます。
公務員の場合、原則として営利企業の役員に就任したり、継続的な報酬を得たりする副業・兼業は認められていません。
一方、2022年の経団連の調査によると、従業員が5,000人以上の企業のうち83.9%が副業・兼業を認めている、認める予定と答えています。
【出典】日本経済団体連合会「副業・兼業に関するアンケート調査結果」
最近は、生成AI活用などビジネスのルールを替えてしまうような面白い仕事の選択肢も増えてきました。
仕事や稼ぐことが好きな人にとっては、副業・兼業に参入しやすいことは魅力的な環境といえます。
公務員を退職して後悔するケース
公務員を退職して後悔する主なケースとして、以下の3つが挙げられます。
- 企業によっては給料や雇用が安定しない
- 民間企業特有の成果主義の厳しさについていけない
- 公務員という肩書がなくなり社会的信用が下がる
公務員を辞めることでさまざまなメリットが得られる一方で、辞めたい思いに駆られて退職し、後悔するケースも一定数あるのが実情です。
それぞれ詳しく解説していきます。
企業によっては給料や雇用が安定しない
公務員を辞めると、企業によっては給料や雇用が安定しないため後悔する可能性があります。
公務員は給料の上昇幅は小さいものの、民間企業と比べて安定した待遇を得られるのがポイントです。
実際、コロナ禍で多くの企業が業績悪化に苦しみ、ボーナスの減額や従業員の解雇を行いました。一方、人事院の公表情報によると、当時の国家公務員の年収は1%以下の減額であり、ボーナスも満額支給でした。
公務員を辞めたいときはどうしても勢いで考えがちであるため、自身にとってのリスク許容度がどれくらいかを慎重に見極める必要があります。
【参考】人事院「本年の給与勧告のポイントと給与勧告の仕組み」
民間の成果主義の厳しさについていけない
民間では公務員と比べると常に成果を求められ続けるため、その厳しさから後悔してしまうケースがあります。
公務員の世界では年功序列が優先され、多少の差はあれど横並びで昇進していきます。
在職中は実感しにくいですが、家庭の事情や体調に問題が生じても雇用が守られているのは大きなメリットです。
筆者は企業勤務ではなくフリーランスの例ですが、常にアウトプットの質で勝負しないといけない環境の厳しさを日々実感しています。
公務員の安定した環境が合っている人も少なからずいて、成果主義が誰にでも向いているわけではありません。
公務員の肩書きがなくなり社会的信用が下がる
公務員を辞ると社会的信用が下がることも、後悔するケースの一つです。
公務員の肩書により、たとえば金融機関からの借り入れなどがほぼ通ります。一方、転職や起業に失敗すると、借り入れなどが相当難しくなるリスクがあります。
元公務員にヒアリングすると、勢いで辞めて家族にショックを与えたことへの後悔や、前職時代に契約を済ませるべきだったなどの声がありました。
安定した立場を捨てる前に、退職後のリスクを十分に想定できているか考える必要があります。
【経験談】公務員を辞める前に考えておくべきこと
公務員を辞めたいと思ったときに考えておくべきことは、以下の3つです。
- 辞めたい理由や得たい未来をしっかり言語化する
- 民間転職・起業・休職など幅広い選択肢を検討する
- 退職の決断後は辞めるタイミングを考え抜く
筆者の実体験を踏まえながら、後悔しないための戦略をお伝えします。ぜひ参考にしてください。
辞めたい理由や得たい未来をしっかり言語化する
公務員を退職する前に、辞めたい理由や得たい未来をしっかり言語化することが大切です。
辞めたいと思った理由を無くせる最適解が「ただちに退職」ではない場合があります。退職によって望む未来が得られるとも限りません。
本記事で紹介してきた内容をもとに、以下のように自身に問いかけを行うのがおすすめです。
- 自分が本当に辞めたい理由はなにか
- 辞めてから始める仕事は長く続けられるものか
- 長期的にはどういったキャリアを築いていきたいのか
- 仕事以外のライフステージの計画はどうなっているか
辞めたくなったときこそ、立ち止まって中長期的に人生計画を設計する必要があります。
民間転職・起業・休職など幅広い選択肢を慎重に検討する
公務員を辞めたいと思った際、民間転職・起業・休職など幅広い選択肢を慎重に検討するのがおすすめです。
辞める理由がネガティブであればあるほど、狭い視点で考えてしまいます。検討すべき主な選択肢としては、以下のとおりです。
- 部署の異動や休職
- 民間企業や他の公務員への転職
- 起業やフリーランスへの転身
公務員を辞める前に、まずは部署異動を検討する必要があります。どうしても職場に行けない場合、思い切って休職して次の一手を考えるのも選択肢の一つです。
また、自由な生き方を望むなら、企業や他の公務員への転職だけでなく、フリーランスや起業の道もあります。
筆者の経験としても、転職エージェントや起業している人などさまざまな実体験を聞いたからこそ、後悔しない選択ができました。
「今のままか転職の2択しかない」と思い込まずに、自分に合った柔軟な働き方を模索してみてください。
【関連記事】「公務員は失業保険をもらえない?代わりの手当や手続きの流れも解説」
退職の決断後は辞めるタイミングを考え抜く
公務員を辞める決意が固まったら、次は辞めるタイミングを慎重に見極める必要があります。
何よりも優先すべきは転職や起業の時期との兼ね合いです。一方、金銭面や職場への配慮など、他にも検討すべきことがあります。
たとえば、退職の意思の申し出は、1ヶ月前までにすべきなど期限を定めている職場が少なくありません。また、退職金の金額は少しの勤務期間の差で大きく変わる場合があります。
【関連記事】
「公務員を辞めるベストなタイミングは?退職の申し出時期や手続きも解説」
「公務員の退職金はどれくらい?平均額や計算方法について解説」
公務員を辞めたい気持ちを整理して後悔しない決断をしよう
本記事では、公務員を辞めたい理由や退職のメリット、後悔するケースなどについて解説してきました。
公務員を辞めたい理由は、自己成長できる仕事がしたい、待遇への不満があるなどさまざまです。
退職すると希望の仕事に挑戦できて、実力がより正当に評価されるなどメリットがあります。一方、給料の不安定さや成果主義の厳しさなどにより後悔するケースも少なくありません。
退職する理由をしっかりと整理して言語化したうえで、幅広い選択肢を慎重に検討することが重要です。
後悔しない決断ができるよう、本記事の内容を参考にしてみてください。
なお、筆者は公務員の退職を検討している方への相談サービスを実施しています。
記事には書けないリアルな退職の実態についてもお伝えできるので、ぜひご検討ください。
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