「公務員の週休3日制はいつから始まるのか」「制度を利用すると給料はどうなるのか」など、公務員の週休3日制について疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
国家公務員の週休3日制は、2025年4月からの導入が予定されています。地方公務員でも各自治体で導入が進められている段階です。
本記事では、元国家公務員の筆者が、週休3日制の概要や導入時期、給与への影響、関連する働き方改革について、経験を交えて解説します。
週休3日制を理解して、理想とするワークライフバランスの実現に近づけるよう、ぜひ最後までご覧ください。
公務員の週休3日制とは
公務員の週休3日制とは、総労働時間を維持したまま土日以外に平日1日の休みを増やせる新しい働き方の制度です。自身で働く時間を選べるフレックスタイム制を拡充した仕組みといえます。
上記の図のように、例えば月曜日を勤務しない日(ゼロ割振り日)として、その分の労働時間を別の曜日に少しずつ割り振るといった対応が可能です。
従来、週休3日制を含むフレックスタイム制の適用は、育児や介護などにより働く時間に制約がある職員に限定されていました。しかし、働き方改革の一環として、希望するすべての職員が利用できるように拡大されます。
週休3日制を活用することで、趣味や帰省、学び直し、地域活動などを目的として、自身の予定に合わせて柔軟に休日を選択可能です。制度導入の背景には、公務員の働き方改革を推進し、優秀な人材を確保したいという狙いがあります。
国家公務員の週休3日制は2025年4月から導入
国家公務員の週休3日制は、人事院の主導のもと、2025年4月からの本格導入が予定されています。人事院が2023年8月に内閣へ勧告を行い、導入に向けて「勤務時間法」の改正・施行作業が進められています。(※)
制度の対象となるのは、交代制勤務者などをすべての職員です。ただし、週休3日制の利用は希望制となっており、すべての職員に義務付けられるわけではありません。従来通りの週休2日制での勤務も選択できます。
週休3日制の背景には、若手キャリア官僚の退職増加への対策という側面があります。実際に筆者が公務員だった頃にも、柔軟でない働き方が転職の大きな理由の一つになっている同期がいました。
制度の導入により、国家公務員の労働環境がさらに改善し、優秀な人材の確保と定着につながると期待されています。
※参照:人事院「令和5年 人事院勧告・報告の概要」
地方公務員の週休3日制は順次導入
地方公務員の場合にも、各自治体(県庁・市役所など)ごとに週休3日制の導入が順次進められている段階です。地方公務員の勤務時間や休暇制度は条例で定められているため、自治体ごとによって導入状況に差があります。また、交代制勤務者や教員には適用されないのが一般的です。
ここでは、地方公務員の週休3日制を以下の3つに分けて解説します。
- 全自治体に共通する導入方針
- 各自治体での具体的な取り組み
- 今後の導入に向けた課題
それぞれ詳しくみていきましょう。
全自治体に共通する導入方針
地方公務員の週休3日制は、2023年に総務省が設置・開催した有識者検討会をきっかけに、各自治体での導入が進められています。(※)
各自治体は、組織の実情に応じて、週休3日制を含むフレックスタイム制に関して条例で具体的な制度設計を行っている段階です。すでに制度を試験的に導入している自治体もあれば、制度設計の段階の自治体もあるなど、進捗状況はさまざまです。
週休3日制の背景には、国家公務員と同様に、地方公務員全体の働き方改革の推進や人材不足への対応という側面があります。柔軟な勤務形態を提供することによって、多くの優秀な人材を確保したい考えです。
※参照:総務省「社会の変革に対応した地方公務員制度のあり方に関する検討会」
各自治体での具体的な取り組み
各自治体における地方公務員の週休3日制の導入状況・事例をいくつか紹介します。
例えば群馬県前橋市では、2023年8月に週休3日制を試験的に導入しました。希望するすべての職員を対象に、週3日間を9時間45分勤務、週1日を9時間30分勤務とする制度設計です。(※1)
試行後のアンケートでは「業務にメリハリができた」という肯定的な意見がある一方で、「負担が増えた」と答えた職員もいました。
また、千葉県では、2024年6月から全職員を対象に週休3日制を含むフレックスタイム制を導入しました。
午前10時から午後3時をすべての職員が勤務する「コアタイム」に設定し、それ以外の午前7時から午後10時までの間をフレキシブルタイムとして、勤務日や働く時間を選べる制度設計です。(※2)
他にも、東京都や長野県などは、2025年度からすべての職員を対象に週休3日制を導入予定と表明しています。
このように、自治体ごとに導入時期や制度内容は異なるものの、地方公務員のワークライフバランスの向上を目指し、制度の導入を進めていることがわかります。
※1 参照:前橋市「働き方改革に向けた「週休3日制」の試行について(制度説明)」
※2 参照:千葉県「職員が働きやすい職場環境の整備について」
今後の導入に向けた課題
地方公務員の週休3日制の導入は自治体ごとに委ねられているため、導入に向けた課題が複数存在します。
特に小規模自治体では、職員数が限られる中で、週休3日制の導入後も窓口業務などを円滑に遂行し続けられるかという懸念があります。
また、運用面でも、週休3日制の導入により勤務時間の管理が複雑化する可能性があり、自治体によってはすぐに対応できない点も課題の一つです。
これから地方公務員を目指す方は、志望する県庁や市役所などの対応状況を確認してみるとよいでしょう。
公務員の週休3日制が導入されても給与は変わらない
国家公務員・地方公務員いずれも、週休3日制が導入されても原則として給与(給料)の水準は変わりません。
週休3日制は、一定期間における総労働時間を維持することが制度の基本条件となっているためです。具体的には、公務員の所定労働時間は1日当たり7時間45分であり、4週間で155時間の総労働時間が確保されます。
そのため、働く日数が変わっても、月額の給与や各種手当は従来通りの金額が支給される仕組みです。
ただし、働く時間の変化にともない残業(超過勤務)が夜遅くにずれ込むことにより、その分の割り増し分が増える可能性はあります。
公務員の週休3日制とあわせて知っておきたい働き方改革
公務員の働き方改革としては、週休3日制以外にもさまざまな取り組みが行われており、公務員のワークライフバランス改善が期待できます。国家公務員の制度改革が進み、それをもとに各自治体でも条例改正が検討される流れです。
例えば、2024年度以降、国家公務員には11時間の「勤務間インターバル」を確保させるよう各省庁に対して努力義務が課されています。(※1)
これまでは、国会対応が続く日に、職員が勤務終了から勤務開始まで十分に休息できない状態が見過ごされてきました。より働きやすい環境になるよう、勤務間インターバルの実態把握や改善に向けた取組が進められています。
そのほかにも、2024年末に人事院が内閣に行った勧告では、以下のような項目が取り上げられています。(※2)
- 育児時間の取得パターンの多様化
- 子の看護休暇の対象を小3まで拡大
- 兼業制度の見直しの検定
上記の項目を踏まえて検討が進み、2025年度以降はより働きやすい環境が整っていくと期待できます。
※1 参照:人事院「公務職場にも勤務間のインターバル確保の努力義務が導入されました!」
※2 参照:人事院「令和6年 人事院勧告・報告の概要」
公務員の週休3日制を含む働き方改革の動向を注視しよう
公務員の週休3日制とは、総労働時間を維持したまま柔軟な働き方を実現する制度です。給与水準は変わらず、希望する職員が自身のライフスタイルに合わせて選択できる点が特徴といえます。
国家公務員の週休3日制は2025年4月から、地方公務員でも各自治体で順次導入が進められています。公務員の週休3日制を含む働き方改革の動向を注視して、自分に合った働き方を選択しましょう。
なお、本記事の執筆者は、公務員の就職・転職・退職に関する相談サービスを実施中です。元職員ならではの、記事には書ききれない詳しい情報の提供や、フラットな視点でのアドバイスを強みとしています。
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