「国家公務員はテレワークできない?」「テレワーク手当や通勤手当を詳しく知りたい」など、国家公務員のテレワークに関して疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
国家公務員には、いまだ対面や紙の文化が根強く残っているのは事実です。一方で、各省庁向けのガイドラインの作成やテレワーク手当の創設など、テレワーク制度の整備は着実に進んでいます。
本記事では、元国家公務員の筆者が、国家公務員のテレワーク制度の概要や実施率の実績、テレワーク推進を妨げる要因、押さえておきたいポイントについて経験を交えて解説します。
最新の制度や実態を把握し、自らのワークライフバランスの実現に生かせるよう、ぜひ最後までご覧ください。
国家公務員のテレワーク制度とは
国家公務員では、民間企業と同様に、在宅勤務を含むテレワークの推進が進められています。制度の目的は、柔軟な働き方の実現や優秀な人材の確保などさまざまです。
国家公務員のテレワーク制度は、法令上の明確な根拠はありませんが、職員の希望と申告を前提として、職務命令により実施されています。勤務場所は自宅に限定されず、サテライトオフィスでの勤務も可能です。
制度の推進に向けて、令和6年3月に「国家公務員におけるテレワークの適切な実施の推進のためのガイドライン」が公表され、各省庁で取り組みが進められています。
ガイドラインによると、業務運営上の支障がない限り、テレワークを認めることが基本方針です。ただし、窓口業務や交代制勤務、また新規採用や異動直後など対面でのコミュニケーションが望ましい場合は、対象外となる可能性があります。
参照:内閣人事局「国家公務員におけるテレワークの適切な実施の推進のためのガイドライン(令和6年3月)」
国家公務員のテレワーク率の実績
ここでは、国家公務員のテレワーク率の実績を紹介します。
最新データである内閣人事局の「令和5年度働き方改革職員アンケート結果について」によると、令和5年度において、週に平均1回以上テレワークを実施した国家公務員は全体の29.4%です。一方で、同アンケートでは、以下のように国家公務員のテレワーク希望割合と実施割合に乖離があったことも示されています。
テレワーク頻度 | 希望割合 | 実施割合 |
---|---|---|
週4~5回 | 5.6% | 1.1% |
週2~3回 | 22.2% | 8.1% |
週1回 | 29.8% | 10.2% |
月2~3回 | 15.0% | 10.2% |
月1回 | 8.2% | 17.2% |
実施(希望)なし | 19.2% | 53.2% |
上記の表をもとに計算すると、週に1回以上のテレワークを希望する国家公務員が57.6%いるのに対して、実際にテレワークを実施しているのは29.4%にとどまっていることが分かります。
テレワークの希望割合と実績割合が乖離する原因は、ツール導入やペーパレス化の遅れ、制度面の未整備などさまざまです。特に、同アンケート調査では、パソコンやチャットツールなどのハード整備は改善が進んでいる一方で、テレワークを実施しにくい雰囲気や対面による説明対応の必要性などが課題であると示唆されています。
このように、国家公務員のテレワーク率は数字上で一定の実績はあるものの、いまだ改善の余地は大きいといえます。
国家公務員のテレワーク推進を妨げる主な要因
国家公務員のテレワーク推進を妨げる主な要因として、以下の3つが挙げられます。
- 対面での打ち合わせ重視の文化があるため
- 紙文化が根強く残る職場環境があるため
- 窓口業務や緊急対応など対面中心の仕事があるため
それぞれ詳しくみていきましょう。
対面での打ち合わせ重視の文化があるため
国家公務員には、いまだ対面での打ち合わせ文化が根強く残っており、テレワーク推進を妨げています。省庁内部での打ち合わせはもちろん、国会議員や他の団体との面会・会議などにおいても同様です。
実際に元公務員の筆者が所属していた部局でも、幹部職員が打ち合わせを目的に出勤するため、部下も出勤せざるを得ない状況がありました。
また、他の職員が打ち合わせで出勤しているなか、自分だけテレワークすると「サボり」と思われるといった心理的な抵抗感もみられます。テレワークする職員よりも、出勤する職員に業務負担が偏ってしまうなどの課題もあります。
紙文化が根強く残る職場環境があるため
国家公務員の職場では過去の資料や文献が紙媒体で保存されているため、参照のために出勤が必要となり、テレワークをしにくくなっています。
省庁や部局によるものの、「デジタル化」は会議資料の紙配付をやめる程度にとどまり、職員が日常的に使う資料は印刷しているのが実態です。
特に幹部職員は資料を紙で求める場合が多く、電子決裁システムを紙の決裁と併用していることもあります。メールでの確認よりも、紙資料を持参して直接確認する方が「早くて確実」という文化も残っています。
窓口業務や緊急対応など対面中心の仕事があるため
国家公務員には完全にオンライン化できない性質の仕事があり、テレワークの推進を妨げています。
例えば、ハローワークや検察局といった特定の場所で勤務する必要がある窓口業務が代表例です。他にも、特定の機器を用いる仕事や、データ観測など24時間365日誰かが任務についている必要がある業務なども、対面中心の仕事として挙げられます。
対面中心の仕事は国家公務員に限った話ではないものの、無くてはならない行政サービスとして今後も必ず残り続ける点が特徴です。
国家公務員のテレワーク制度に関するポイント
国家公務員のテレワーク制度に関して押さえておきたいポイントには、以下の2つが挙げられます。
- テレワーク手当が創設されている
- 通勤手当が減額される場合がある
それぞれ詳しくみていきましょう。
テレワーク手当が創設されている
2024年度からテレワーク手当(在宅勤務等手当)が新設され、国家公務員のテレワーク推進が図られています。テレワーク手当は光熱水費などの職員負担軽減が目的であり、国家公務員の働き方改革を推進する施策の一環として位置づけられています。
テレワーク手当の対象は、月10日以上テレワークを実施する職員であり、月額3,000円が支給される制度です。まだ創設されたばかりの手当であり、金額や対象範囲などは今後変わる可能性があります。
参照:人事院「令和5年 人事院勧告・報告」
通勤手当が減額される場合がある
国家公務員は、テレワーク勤務により通勤回数が継続的に減少する場合には、通勤手当が減額されます。
具体的には、2ヶ月以上にわたって通勤回数が減少する見込みがあると、実際の通勤回数に応じて通勤手当が調整される仕組みです。
なお、月の全日数をサテライトオフィスで勤務する場合は、自宅からサテライトオフィスまでの通勤手当が支給されます。省庁とサテライトオフィスの両方で定期的に勤務する場合にも、それぞれの通勤回数をもとに計算した金額の合計が支給される決まりです。
参照:内閣人事局「国家公務員におけるテレワークの適切な実施の推進のためのガイドライン(令和6年3月)」
国家公務員のテレワーク推進以外にも働き方改革が進んでいる
優秀な国家公務員の確保・定着を目指して、テレワークとあわせてさまざまな働き方改革や処遇改善が進められています。
例えば、2025年4月から国家公務員に「週休3日制」が本格的に導入される予定です。育児や介護などの事情がない職員も、総労働時間を維持したまま、土日以外に平日1日の休みを増やせるようになります。
他にも、2024年度から国家公務員の初任給が大幅に引き上げられており、大卒の大卒の総合職で2.9万円、大卒の一般職で2.4万円と過去最大の引き上げ幅です。
国家公務員を志望する方は、こうした動向を把握した上で、自分にとって納得できる働き方かどうかを見極めるとよいでしょう。
国家公務員のテレワーク制度の動きを引き続き注視しよう
国家公務員のテレワーク制度は、対面文化や紙文化による制約が多く、まだ発展途上の段階です。一方で、テレワーク手当の新設や週休3日制の導入など、テレワークを含む柔軟な働き方を実現する改革は確実に進んでいます。
テレワーク制度を含む働き方改革の動きを引き続き注視して、自らが理想とするワークライフバランスの実現に生かしましょう。
また、国家公務員への就職・転職を検討中の方は、職員や経験者の話を聞くことにより、入省後のイメージが鮮明になります。
本記事の筆者は、国家公務員への就職・転職に関する相談サービスを実施中です。記事には書けない詳細な情報の提供や、公平な視点でのアドバイスを強みとしています。
国家公務員の実態をより詳しく理解でき、選考にも自信を持って挑めるようサポートします。詳細はリンクからご確認ください。
コメント