公務員の病気休暇とは?デメリット・給料への影響・取り方を徹底解説

公務員の病気休暇ととは

「公務員の病気休暇はデメリットが大きい?」「休暇中に給料は満額出るのか」と不安を感じている公務員の方もいるでしょう。

公務員の病気休暇は、療養中に給料が満額保証される強力な権利です。無理をして体調を悪化させる前に、制度を正しく使って回復に努めることが、キャリアを守る最善策です。

本記事では、元国家公務員の筆者が、公務員の病気休暇の仕組みやデメリット、給料への影響、取り方などを解説します。 制度の全体像を理解し、安心して心身を休める一歩を踏み出しましょう。

目次

公務員の病気休暇とは

公務員の病気休暇とは

公務員の病気休暇とは、負傷や疾病のため療養が必要な場合に、最大90日間「職員」としての身分と給料が保証される制度です。

国家公務員の病気休暇は勤務時間法や人事院規則で規定されています。一方、地方公務員の病気休暇は各自治体の制度によって条件が異なります。

詳細なルールは各自治体の条例や規則が一次情報となるため、必ず確認しましょう。

参照:人事院「一般職の国家公務員の休暇制度(概要
参照:e-Gov法令検索「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律
参照:e-Gov法令検索「人事院規則一五―一四(職員の勤務時間、休日及び休暇)

期間は最大90日で病気休職とは異なる

公務員の病気休暇は原則90日まで取得可能であり、給料が減額される「病気休職」とは明確に異なります。

国家公務員の病気休暇の期間は、原則として連続90日を超えない範囲で認められます。90日のカウントには、土日や休日も含まれることが一般的です。病気休暇は給料が全額支給されますが、90日を超えて病気休職へ移行すると、8割支給や無給へと減額されます

また、病気休職はすぐに職場復帰が見込めない場合に発令される「分限処分」の一種で、本人の意向に関わらず決定される点が病気休暇と異なります。

参照:人事院「職場復帰の手引き

風邪などで短期療養するなら診断書なしで取得できる

公務員の病気休暇を1週間程度の短期療養で利用する場合、多くの規定では医師の診断書なしで承認されます。

具体的には、連続する休暇日数が1週間(または8日)を超えない限り、医療機関の領収書や薬の説明書など、受診の事実を確認できる書類のみで足ります。ただし、直近1ヶ月以内に繰り返し取得しているといった場合は、1日のみであっても診断書を求められるケースがある点に注意が必要です。 

また、診断書が不要な場合でも上司への報告は必要であり、「自宅療養により回復が見込まれる」旨を説明して承認を得ます。なお、手続きが簡素な「年次有給休暇」が残っている場合は、そちらを優先して消化することもあります。

参照:人事院「国家公務員の心の健康の問題による長期病休者の 円滑な職場復帰のための支援手法(担当者向けマニュアル)
参照:人事院「病気休暇の取扱いについて

公務員の病気休暇のデメリット

公務員の病気休暇のデメリット

公務員の病気休暇の主なデメリットには、以下があげられます。

  • ボーナスの勤勉手当が減額される
  • 昇給や昇格の時期が遅くなる
  • 短期間で繰り返し取得すると期間が通算される
  • 職場での気まずさが生じる

デメリットを詳しく把握すれば、取得後の後悔を防げるようになります。それぞれ詳しくみていきましょう。

ボーナスの勤勉手当が減額される

公務員の病気休暇の取得日数に応じて、ボーナス(期末手当・勤勉手当)のうち、勤勉手当が減額されます。

国の場合、基準日(6月1日・12月1日)以前の6ヶ月間で病気休暇が「30日」を超えると、その期間すべてが勤務期間から除外され、支給額が減少する仕組みです。多くの自治体でも同様の運用がなされています。

なお、在職期間に応じて支給される「期末手当」は、病気休暇中であっても在職していれば減額されずに支給される場合がほとんどです。

参照:人事院「人事院規則九―四〇(期末手当及び勤勉手当)

昇給や昇格の時期が遅くなる

公務員の病気休暇は「勤務しなかった日」として扱われ、その日数が一定割合を超えると昇給区分が下がります。

具体的には、病気休暇の日数が全勤務日の一定割合(6分の1など)を超えると、通常の4号昇給が2号や昇給なしになるなど、昇給が抑制されます。公務災害による休暇は勤務とみなされる特例がありますが、私的な傷病による病気休暇は対象外です。

管理職への昇格試験や選考でも、直近の勤務実績が評価対象となるため、長期の取得歴が不利に働く可能性があります。

短期間で繰り返し取得すると期間が通算される

病気休暇から復帰後に十分な勤務実績がないまま再取得すると、前回の休暇日数と合算され、上限の90日に早く到達します。

特に注意が必要なのは「連続8日」というラインです。国の規則では、連続して8日以上休むと「通算ルール」が適用される状態になります。

一度この状態になると、復帰後に勤務した日を20日以上積み上げない限り、前回の日数と合算されてしまいます(これを「クーリング期間」と呼びます)。1週間以上休んだ後は、「まず1ヶ月程度、無理せず通勤し続けること」が給料を守るための重要な目標です。

参照:人事院「病気休暇の取扱いについて

職場での気まずさが生じる

公務員の病気休暇を取得すると、繁忙期での不在や業務負担への懸念から、復帰後に心理的な居心地の悪さを感じることがあります

特にメンタルヘルス不調は外見からは分かりにくいため、周囲の目や偏見を過剰に気にしてしまいかねません。復帰後の人事異動で負担の少ない部署へ配置転換されることもあり、これをキャリアの中断と捉えてしまうケースも存在します。 

病気休暇の前後で最低限の引き継ぎや定期的な連絡を行い、できるだけ心理的なハードルを下げることが重要です。

公務員の病気休暇の90日間は給料が満額保証

公務員の病気休暇期の最大90日間は、法律や条例で有給と明記されており、基本給が100%支給されます。給料だけでなく、地域手当や扶養手当、住居手当といった毎月の諸手当も通常通り支給され、生活の保障につながります。

民間企業の傷病手当金(標準報酬月額の3分の2)と比較して手厚い制度であり、ボーナスも勤勉手当の一部減額を除き支給対象です。無理をして体調を悪化させて病気休職になる前に、休暇取得で体調を回復させることが合理的といえます。

なお、通勤手当は通勤の実態がない月は不支給となったり、定期券の払い戻しや返納を求められたりする場合があるため、確認が必要です。

公務員の病気休暇の取り方

公務員の病気休暇の取り方は、以下の3ステップです。

  1. 専門医を受診して診断書をもらう
  2. 上司に相談して休暇を申請する
  3. 療養中の連絡手段を確認しておく

事前に流れを把握しておけば、取得までをスムーズに進められます。それぞれ詳しくみていきましょう。

1.専門医を受診して診断書をもらう

公務員の病気休暇申請に用いる診断書は、心療内科や整形外科などの専門医を受診して取得します。診断書には病名だけでなく、「療養を必要とする期間(〇月〇日から〇ヶ月間など)」や「自宅療養が必要である旨」の明記が必要です。

初診ですぐに診断書が出るとは限らないため、数回通院して医師と相談し、働くことが困難な状態を正確に伝えましょう。診断書の発行には数千円程度の手数料がかかりますが、スムーズな休暇取得のための必要経費です。

症状が重く本人が受診できない場合は、家族が代理で受診すれば診断書をもらえるケースもあります。

2.上司に相談して休暇を申請する

公務員の病気休暇を取得するため、診断書受領後は速やかに直属の上司へ連絡して申請します。対面での申請が望ましいですが、体調により出勤が困難な場合は電話やメールでの連絡が許容されるケースもあります。

申請時には、職場ごとに定められた各種書類(病気休暇願など)の記入が必要です。また、引き継ぎが必要な業務がある場合は、メモやデータを送るといった配慮を見せると、不在中の業務停滞を防げて理解が得られやすくなります。

3.療養中の連絡手段を確認しておく

公務員の病気休暇中には、療養に専念できるよう業務に関する連絡は行いませんが、事務的な連絡は必要です。傷病手当金や給料の手続き、診断書の期限更新などをメールでやりとりします。

電話は療養の妨げになるため、「事務連絡は原則メールで行う」「返信は体調が良い時にする」といった無理のないルールを決めましょう。窓口を庶務担当者など1人に絞ってもらえば、職場との心理的な距離を保てます。

完全に音信不通になると手続き漏れやトラブルの原因になるため、診断書の期限が切れる前には必ず連絡を入れるなど、自分の身分を守るための最低限のコンタクトは不可欠です。

公務員の病気休暇中の過ごし方

公務員の病気休暇中は職務専念義務が免除されているものの、公務員として誤解を招く行動は控える必要があります。

公務員の病気休暇中の過ごし方に関するポイントは、以下のとおりです。

  • 旅行などの外出は控えて自宅療養する
  • SNSはトラブルを招きやすいため控える

それぞれ詳しく解説します。

旅行などの外出は控えて自宅療養する

公務員の病気休暇は療養専念を条件に給料が支払われているため、旅行や遊興は禁止されています。実際に、病気休暇中に海外旅行や温泉旅行に行き、その事実が発覚して停職や減給などの懲戒処分を受けた事例が発生しています。

通院やリハビリのための散歩、日用品の買い物など日常生活に必要な外出は問題ありませんが、長時間の外出や繁華街への出入りは避けましょう。

実家へ帰省して療養する場合は、事前に職場へ居所変更の届け出をしておけば認められることが多くあります。

SNSはトラブルを招きやすいため控える

公務員の病気休暇でのSNS投稿は、「仮病疑惑」や情報の漏洩につながるリスクが高いため、控えるほうが無難です。休暇中に遊びに行っている様子や元気そうな写真をSNSに投稿すると、トラブルになりかねません

アカウントが匿名であっても、過去の投稿内容や位置情報などから個人が特定され、処分の対象になるリスクがあります。職場への不満や内部事情を書き込むことは、信用毀損に該当する可能性が高いため厳禁です。

復帰後の人間関係を円滑に保つためにも、休暇中はSNSの更新を停止し、療養に専念している姿勢を示しましょう。

公務員の病気休暇を活用して心身回復に努めよう

公務員の病気休暇は、療養期間中の給料が満額保証される手厚い制度です。 ボーナス減額や昇給遅延などのデメリットはありますが、長期休職や退職に至るリスクに比べれば、必要な経費といえます。

まずは規則を確認して、数日程度の休息から検討しましょう。また、専門医の診断書をお守りとして手元に持っておくだけでも、精神的な余裕が生まれます。

公務員の休暇制度を正しく理解し、自分自身の未来を守るために「戦略的な休息」を選択しましょう。

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この記事を書いた人

筆者は新卒から国家公務員(国家総合職)として約7年間勤め、政策の企画立案・調整、調査研究、国会の対応など多岐にわたる業務に取り組んできました。

本メディアでは、自身の経験をもとに、公務員の就職・転職・退職に関するコンテンツを提供しています。

就職・転職・面接対策に関する相談サービスも提供中です。

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